■「顧客の創造」と「企業家精神」 その2

4 顧客概念を中核にしたマネジメント体系

経済学的な発想で目的を設定すると、機能的な概念で表現することになります。ドラッカーが「顧客の創造」といったとき、無意識のうちに経済学的な発想に従っていたことがうかがわれます。そして、この基盤の上にマネジメント体系が展開されていきました。

ドラッカーが1990年頃から、非営利組織の経営について、体系化を目指しています。ここでいう体系化とは、使える仕組みにするということです。ただ1990年の『非営利組織の経営』では、まだ非営利組織において「顧客」という存在を提示していませんでした。

非営利組織においても顧客がいると思いついたとき、ドラッカーのマネジメント体系の大枠ができたということになります。ドラッカーの非営利組織向けに作られた体系が、そのまま営利組織向けにも通用する体系だったということが確認されました。

 

5 顧客の創造というマネジメントの機能

当初、非営利組織向けの指針だった5つの質問を中核とする体系が、営利組織まで含めたものとなり、『経営者に贈る5つの質問』という題名の本にもなりました。ここでいう経営者とは、営利組織および非営利組織を経営する人を対象とします。

顧客は組織との関係で存在すると考えられます。固定的に存在するものではなく、組織の在り方によって、顧客の対象が変わるということです。顧客という存在は、組織の在り方によって決まるということになります。マネジメントの体系が変わらざるを得ません。

もはや「顧客の創造」は会社の目的ではなくなります。顧客の創造という活動は「機能」ですから、組織の機能と言えるでしょう。さらに実質的な役割を見れば、組織というよりも組織の活動における機能、あるいは組織の在り方における機能といえます。

つまり、「顧客の創造」はマネジメントの機能であるということになるのです。組織の活動・組織の在り方によって、顧客が生まれることになります。そして、組織の活動・組織の在り方を決める役割を担っているのがマネジメントだということです。

 

6 イノベーションとは顧客を創造する活動

顧客の概念が変わることによって、顧客の創造が「会社の目的」に限定されなくなりました。顧客の創造とは「マネジメントの機能」であると考えるほうが的確だということです。さらに「マネジメントの機能」は、もう一つの機能と結びつきます。

ドラッカーは企業活動の中核に、マーケティングとイノベーションを据えていました。ここでも企業活動に限らず、非営利組織においてもそのまま適応されることになりますから、マネジメントの中核がマーケティングとイノベーションだと言うべきでしょう。

イノベーションを基礎づけるものは、シュンペーターによれば企業家精神です。ドラッカーもそれを継承して、『イノベーションと企業家精神』という本を書いています。ただ、これは「精神」を排除した概念でした。企業家機能というべきものです。

そしてここでも「企業家」が問題になります。イノベーションを起こすのは企業家に限りません。もし企業家の実質を、経営者とかマネジメント層と考えたならば、どうでしょうか。イノベーションとは、顧客を創造する活動だということになります。