■ウンボルト・エーコの『論文作法』:文章の書き方の基本

1 エーコ著『論文作法』

ウンボルト・エーコは『薔薇の名前』でベストセラー作家になりました。この人はイタリア人で、どのくらい偉いか私にはわかりませんが、しかし著名な学者であることは確かでしょう。1932年に生まれて、2016年2月19日に84歳で亡くなっています。

この人の『論文作法』はときどき参考文献に顔を出します。以前、どんな本だろうと思って購入したのですが、しばらくどこかに置いたまま忘れていました。最近になって、手に取ってみました。この日本語訳では、著者名がエーコではなくて、エコになっています。

『論文作法』をお勧めするほど、私自身、この本になじみがありません。飛ばし読み程度でしか読んでいませんから、お勧めする資格はありません。ただ、この本の中の一部でしかないのですが、ヒントになることがいくつかあったので、その話をしたいと思います。

まず、この本の全体的な構成について、章立てだけでも見ておきましょう。1章が「卒業(博士)論文とは何か。何に役立つか」となっていますから、だいたいこの本のターゲットはわかると思います。

2章が「テーマの選び方」、3章が「資料調査」、4章が「作業計画とカード整理」、5章が「原稿作成」、6章が「決定稿の作成」、7章が「むすび」です。こういう構成の本になっています。文章についての話は5章で中心的に論じられています。

2 カード派のエーコ

まずエーコの場合、カード派であることがわかります。4章で引用のカードの実例が示されています。ページで言うと146ページに、「芸術としての人生」という項目があって、リラダンの『アクセル』という本の中の言葉が引用されています。

▼「生きる? そんなことは下僕どもがやってくれるさ。」

この言葉をエーコはどこで使うつもりだったのでしょうか。興味があったからカードにしておいただけなのでしょうか。よくわかりませんが、これは引用のカードです。エーコによると、様々な種類のカードがあるようです。

「本または論文の読書カード」「主題別カード」「著者別カード」「引用のカード」「作業カード」、これらのカードの種類をいくつかあげた上で、エーコはこんなことを言っています。

▼本当にこれらのカードを全部作成しなければならないのか? もちろん、否である。簡単な読書カードだけで満足して、その他のアイデアは全て、メモ帳に書き留めてもよい

いずれにしても、エーコはカードを必要としているようです。しかし偉い学者が実行している方法だからといって、それだけで素晴らしい方法とは言いきれません。自分に合った方法を採用すればよいはずです。

つまり、エーコの場合には、カードを使ってるということでしたが、それがいいのか悪いのか、ひとまずどちらでもよいことでしょう。大切なのは、自分に合っているかどうかです。カードを否定的に扱っている学者はめずらしくありません。

例えば清水幾太郎は『本はどう読むか』などで、ノートを使っていると述べています。カードを作ってみたけれども、うまくいかなかったと語っています。キンドルバーガーという経済史の研究で著名なアメリカの学者もノート派です。

ノートが正しいとか、カードが正しいとかではなくて、その人に合っているかどうかでしょう。私の場合、カードはもう作る気がなくなっています。カードに興味がもてなくなっているため、4章の「作業計画とカード整理」を本気で読む気にならないのです。

[つづく]

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