■ビジネス・業務を考えるときに:モデル化の発想
1 設計図を作ることが必要
「業務」という言葉はビジネスを構成する要素を思い起こさせます。そのためか、業務マニュアルを作るときに、業務プロセス中心の発想になりがちです。しかし全体のビジネスを考えるときに優先されるのは、ビジネスの仕組み、モデルを作ることになります。
ビジネスを考えるときに、プロセスを考えることは重要ですが、プロセスが先ではありません。個々の仕事の中に作業手順があるかもしれませんが、先に全体の構成を考える必要があります。作業手順の整理の前に、設計図を作ることが必要だということです。
ビジネスの設計ですから、住宅の設計図のように静的ではありません。動的な面がたくさんあります。それはプロセスと言えるかもしれません。業務=ビジネスの場合、反復させることになりますから、プロセスはしばしばサイクルを伴う仕組みになります。
2 業務の理解:残念なレベルの事例
ビジネスを考えるときに、業務システムを構築するときの発想が強くなっています。業務システムを導入することは、もはや当然のことですから、業務システムをどう構築するかということは、とても大切です。しかしその前に考えるべきことがあります。
ビジネスの設計があって、その中心に人間が置かれるという前提がある場合なら、業務システムをどう取り入れるかということが有効な議論になります。しかし、全業務をプロセス化した…というような話が出てくることがあって、驚かされることがありました。
数年前、どなたでもご存知の大企業の方から、業務システムの操作マニュアルがあるので、それを利用して業務マニュアルを作ろうとしている、どうすればいいかという話がありました。操作マニュアルの下に、業務を定義して記述していきたいということです。
当然ながら、こうした発想で業務マニュアルを作るのは無理です。もはやそんな話はないはずですが、そのときは2社から続けて同様のお話がありました。業種が違いますから、この3社は連携してなかったと思います。残念なレベルだったということです。
3 モデル化の発想が必要
読解について、この欄に何度か書きました。新井紀子先生のご指摘のためか、やっと今年に入ってから、企業でも読解のレベルが問題になってきました。何となく感じていたことだったからこそ、一気に問題化したのでしょう。気がついてよかったと思います。
新井先生たちの場合、気がついてから間もないという印象を受けました。読解力不足の対策について書いたはずの新著が役立ちそうにないのは、準備不足のためでしょう。問題点に気づいたけれども、対策については考えられていないということのようでした。
これは業務の理解の場合と似ていると思います。業務を考えるときに、システムへの理解は必要ですが、それだけでは不十分だということです。読解力のチェックはできても、対策を考えるときに別の発想がないと有効な対策が立てられない…のと同様でしょう。
読むだけでなく書くことも含めて、想像以上に問題があるという認識がうまれつつあります。同様に、ビジネスを考えたり業務の仕組みを考えるときに、基本的な発想が抜け落ちていたり、どこかズレているところがあるのではないか…と思うことがあります。
読解を考えるときに、言葉の仕組みを考える必要があるのは当然のことです。それなしにあれこれ言っても意味がありません。同じように業務の仕組み、ビジネスの設計を考えるときに、モデル化をする発想が不可欠だと思うのです。この点がいま気になっています。