■品詞分類の問題点 その1 言葉の種類分けと文構造

1 無意識のうちに使う日本語のルール

日本語にはルールがあります。とくに意識しなくても、日本語自身が持つルールに基づいて、私たちは読み書きをしています。「です・ます」の使い分けに苦労することは一般的に、まずないでしょう。しかし、このことが落とし穴になることがあります。

自分の書いた文章を見直して、おかしなところが直せる人が文章の書ける人です。自分の文章を他人に見てもらう代わりに、自分で確認するには、日本語のルールを意識する必要があります。このとき音読したり、プリントアウトして確認するのも有効でしょう。

感覚の鋭い人ならば、音読や印刷で十分だろうと思います。しかし特別な人でない限り、文章のルールを意識したほうがよいでしょう。「です・ます」と「だ・である」の接続に仕方の違いで言葉が3種類に分けられるルールについて、以前この欄で書きました。

 

2 言葉の種類分けの意義

言葉の種類分けはなぜ必要なのでしょうか。英文法なら明らかだと思います。品詞が文中での役割を決めることになるからです。英語には主語があり、述語が続きます。文の役割と品詞が対応しているということです。そのため品詞を意識する必要があります。

▼品詞は言葉の種類分けであり、文型は文のパターンの分類です。適切な名詞を主語として使い、動詞を続ける。そして、そのあとは、使った動詞と表したい出来事の種類に応じて、文型を使い分ける。実はこれだけできれば、英語によるコミュニケーションができてしまうのです。 古田直肇『英文法は役に立つ!』 P.71

英語のように、主語と述語動詞の明示が必須の言語では品詞が重視されます。しかし日本語では主語の明示が必須ではありません。日本語の場合、英語ほど言葉の種類分けが厳格ではないようですから、英語ほど品詞を重視する必要がないのは確かでしょう。

日本語の品詞分類で問題なのは、言葉の種類分けをするときに、文の構造と関連づけがなされていない点にあります。言葉の種類分けをする目的がどこにあるかが問題です。文の構造との関連づけをもっと重視して言葉を分類していく必要があると思います。

 

3 品詞分類と文章構造

2つの例文をご覧ください。(1)「あの公園には噴水がある」と(2)「あの公園には噴水がない」の2つの文は同じ構造だと考えられます。文構造を述語の品詞で考えた場合、「ある」は動詞で「ない」は形容詞ですから、①は動詞文、②は形容詞文になります。

文末の品詞を基準にして文構造を考えるのは無理があるのです。例文(1)(2)は「存在すること」を意味する点で共通しています。ここでは品詞よりも文の意味が重要になっています。「美しい」「きれい」でも同様に「好ましい状態」を意味する点が重要です。

「美しい」は形容詞ですが、「きれい」は形容詞ではなく、いわゆる形容動詞です。両者は接続の仕方も異なっています。「美しいです」とは言えても「美しいだ」「美しいである」とは言えません。一方「きれいです」「きれいだ」「きれいです」と言えます。

しかし形式的な違いが文構造に反映していません。(3)「あのアクセサリーは美しかった」と(4)「あのアクセサリーはきれいだった」なら同じ構造の文だと感じるはずです。どこまで言葉の種類分けが文構造に影響するのか、適用領域の問題が出てきます。

言葉を種類分けするとき、接続などによる形式的な基準と、意味を重視した実質的な基準を考慮する必要があります。こうした分類がどこまで文構造に影響を与えるのか、適応領域を見極めながら、言葉の分類を文の読み書きに活かしていくことが大切でしょう。

⇒ 【その2】  【その3

 

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