■業務マニュアルとOJTマニュアル:作成の発想

 

1 安直にはいかない業務マニュアル作成

業務マニュアルに関して、ときどき驚くことがあります。すごく簡単にできますという発想があるのです。作業を手順に分ければ済むだけだという考えが根底にあるように思います。すでになされている業務は、その工程が確立していると思っているようです。

製造業の場合、無駄をなくそうとして様々な工夫をしています。機械がかなりの作業をしてくれますから、その操作や管理が作業の中心になるのだろうと思います。作業に関して、外部の人間が入り込めないほど、現場の人たちが圧倒的な知識を持っています。

それでももっと大きな観点から見るとおかしいと指摘されることになります。以前にも触れた冨山和彦が『稼ぐ力を取り戻せ!』で[日本のメーカーは、標準化やマニュアル化が極端に苦手である]と指摘しています。メーカー以外でも同じ問題があります。

大前研一は『ドットコム仕事術』で、日本企業の場合、[工場の生産ラインに関してはマニュアルが発達している。一方、設計や、資材の購買、間接業務一般に関してはSOPが欠けていることが多い]と指摘しています。SOPとは作業のルールのことです。

業務マニュアルを作る場合、業務を見直して標準化を行い、ルールを作ることが必要になります。これはかなり面倒なことです。そういう覚悟なしに簡単にできるはずないのですが、一部の方は極めて簡単なことだと思っています。不思議です。

 

2 作業手順を分割する発想

宇都裕昭の『寿司修行3か月でミシュランに載った理由』に面白いエピソードがあります。業務マニュアルをつくるアプリケーションのプレゼンを聞いたそうです。[あらゆる業種、仕事内容でも簡単にマニュアルを作れる]アプリケーションだとのこと。

▼そのプレゼンの中に私どもの飲食人大学が紹介されていました。「この寿司職人を育てる学校では、職人の仕事を作業手順に分解して、職人の仕事を誰でもできるようなカリキュラムがあるのでしょう」と。
恥ずかしかったのですが、「すみません、そこ、私の会社です。ちなみに、実はそんなことやってません…」と言わせて頂きました。

まさか当事者がいるとは思わなかったでしょう。当事者がいなかったなら、自信たっぷりに話が終わって、このプレゼンに納得した人もいたかもしれません。残念ながら仕事を作業手順に分解すれば、それでマニュアルになると思っている人たちがたくさんいます。

現在行われている作業を忘れないように記しておくこと自体、よいことです。しかしその記録があっても、それだけで作業が身につくようにはなりません。作業は連続していますし、実践しないと身につかないことが多くあります。高度な作業ほど、そうなります。

 

3 OJTマニュアルと業務マニュアル

単純作業を前提とした発想を、職人になるための教育方法に適用してもうまく行くはずありません。宇都は言います。[教えないでください。まず身につけさせてください]、[手を動かして体に覚えさせる]ということが大切なのです。

こうした教育を効果的に実践するためにカリキュラムが必要です。一定レベルを超えた高度な作業に関して、OJTや教育のプログラムが必要不可欠です。詳細な作業項目を記述してこうやってくださいと言っても、効果はありません。

作業手順に分解してそれを行わせようとする発想は、機械のプログラムをつくるときには有効でしょう。これは機械化をするときの発想です。しかし人間には向いていません。作業は効果的なプログラムにそってOJTや教育訓練で身につけるものです。

何年もかかると言われる職人技が3カ月で身につくのも、その教育方法が優れているからです。今後、業務が高度化するほどにOJTや教育プログラムが重要になってきます。OJT・教育訓練のマニュアルが必要不可欠になるということです。

一方、業務マニュアルを作る場合、身につける作業に焦点を当てるのではなく、業務のありかたそのものに焦点を当てて検討する必要があります。現在の業務を把握し、その業務が妥当であるかを検討し、見直すということが業務マニュアル作成の基本発想です。

 

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