■我妻栄の勉強法:徹底して理解する方法

 

1 一生の方法となった試験の勉強法

我妻栄は1897年に生まれ1973年に亡くなった日本の民法学者を代表する人です。試験勉強にも強く、学校の成績もよかった秀才でした。晩年になっても、朝早く起きて勉強していたそうです。我妻に直接教えを受けた民法学者の遠藤浩が講演で語っていました。

どういう勉強をしたのでしょうか。『民法案内 1 私法の道しるべ』に「私の試験勉強」が載っています。東大の法律相談部の雑誌「法相」に載せた「試験勉強の話」を加筆したものとのこと。昭和31年…ということは1956年、58歳のころに書かれたものです。

最難関の第一高等学校に[首席で入学し]、東大では、後に首相となる岸信介とともに[一年の成績は、同点同分の首席二人]でした。[二年からは、優良可に変わったから、二人の成績をくらべる訳にはいかない]。当時は点数が最重視されていました。

我妻にとって試験勉強の方法は、若い時に行っただけの過去の方法ではありません。ずっと継続した方法でした。[現在、外国の本を読んで論文を作るときにも、だいたいこういうやり方をする]と記しています。受験時代の勉強法が一生の方法になったのです。

 

2 サブノート作り

[大正7年の学制改革があるまで、大学生は、試験の成績の一点一分を争って、ガツガツと勉強したものである]。大正7年は米騒動の年です。我妻が大学2年のときに、この改革がなされました。[私どもは、こうした時代の最後の者である]と書いています。

[当時の勉強の仕方は、ノートを理解して覚えこむことが第一]。[勉強するときには、サブノートというものを作った。ノートから要点を書き抜いたもう一つのノートを作るわけである。参考書を読んだときは、サブノートの中に書き込んでおく]。

覚えこむというのは、条文の文句を暗記することではない。理解した理論を覚えこむことである。それを覚えこむ間に、どんな条文があるということはおのずから覚えてしまった。[p.233]

もちろん[すべての講義について同じように詳しいサブノートを作ったのではない。ノートの左側の白紙のところや教科書の欄外のところに、詳細な見出しをつけ、分類し総合する書き込みをつけただけのものもあった]。これだけで十分な場合もあります。

大切なことを我妻は記しています。[一年のときに徹底して勉強した結果、要領がよくなり、バカ正直なサブノートを作らなくとも効果を上げることが出来るようになった]。いきなり要領のよい方法をとったのではないということでした。

 

3 狭くとも深く、徹底して理解

外国の本を読むときにも、[主要な参考書をまず徹底的に理解する。それから、それを中心にして、関連する他の参考書に手を拡げる]。我妻の勉強のやり方の原則は[徹底的に理解することである]。[とにかく、狭くとも深くというのが私のモットーである]。

私が牧野先生の刑法の教科書を十何回読んだという伝説があるそうだが、非常な間違いである。全体を通じて10回も読むようなやり方は決してしない。わからないところは、二、三ページに、一日も二日も考えることはある。そこをわからすために先生の他の論文を読むこともある。そして、わからないうちは、先に進まない。わかったうえで、サブノートを作る。 [p.238]

我妻の場合、繰り返し読むうちに理解が進んでいく…という考えを取らないということです。具体的な目の前の文章がきっちり理解できない限り、繰り返しても仕方ないという考えです。理解できたなら、簡潔にまとめたノートが作れるということでしょう。

徹底して理解する方法ならば、[終わりまで一度読めば、あとはサブノートを主にしてせいぜい二度も繰り返せば十分である]。こうした勉強を繰り返すと、理解力もつくようです。我妻の守備範囲はかなり広く、いまも民法の領域全般で圧倒的な影響力があります。

我妻自身、[勉強のやり方は、それぞれの性格や頭の性質によって多少違うようである]と書いています。小室直樹はこれはという本を「最低百回は読みなさい」と言ったそうです。ノートを作るのではなくて、本に何回も線を引いて読んでいったようです。

両者の方法は違いますが、主要な参考書を徹底して理解するという点では共通しています。何かを勉強するときに、基本となるテキストを徹底して理解して、それをもとに手を拡げていくというのが、標準的な勉強法なのかもしれません。

 

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