■ドラッカーの論文を読む:「知識労働とサービス労働の生産性」を参考に(その2)

1 資本と技術は生産手段にすぎない

生産性の重要性について、1980年出版の『乱気流時代の経営』でドラッカーは書いています。「経済価値の源泉は生産性である」との考えを基礎にしていました。「知識労働とサービス労働の生産性」では、そのためにどうしたらよいのかについて語っています。

この論文で日本への言及があります。[製造業への傾斜の強い日本でさえ、製造業における生産性の上昇をもって経済成長の原動力とすることはできなくなった]。物作りの生産性よりも、人が価値を付加する仕事の生産性が問題となります。領域が違うです。

物をつくったり運んだりすることについては、資本と技術は、生産要素である。ところが、知識労働やサービス労働では、それらは生産手段であるにすぎない。(中略)何を行うか、どのような技能によって行うかによって生産性が左右される。(p.110 『P.F.ドラッカー経営論集』)

従来の発想なら、資本と技術が最重要ポイントでした。[経済学者は投資を主役とし、技術者は技術を主役とする]とドラッカーは書いています。資本も技術も必要なものですが、それは「手段」に過ぎません。「主役」は人間ならではの行為になります。

 

2 選択と集中、そして仕事の定義が必要

この論文で「生産性向上のための六つのステップ」を提示しています。その第1は、[「何を」行うべきか、何を実現しようとしているか、なぜそれを行わなければならないか]を問うこと。もはや、[何を行うかは自明のこと]ではないのです。

[何を行うべきかを明らかにすること]によって、[その結果、行う必要のない仕事をやめること]が求められます。[仕事を定義し直し、行う必要のない仕事をなくしてしまうこと]。これこそが業務の見直しです。意識的に行わない限り、見直しは出来ません。

別な言い方をするなら、仕事を簡素化し労力を減らし、時間を節約することです。その上で第2に、担当者を[本来の仕事に集中させること]。必要な仕事にエネルギーを注いで仕事を高度化することが必要です。この第1と第2が「選択と集中」にあたります。

第3に求められるのは、生産性の意味を考えることです。生産性の尺度をどうするかが問われます。質の問題なのか、量の問題なのか、ここに時間やコストがどう絡んでくるのか、この種のバランスを検討する必要があります。[仕事の定義の仕方の問題]です。

[何が必要かを明らかにし、仕事に集中し、生産性の意味を明らかにするだけで、知識労働やサービス労働の生産性はかなり上がる。直ちに上げることのできる部分のほとんどを上げられる]とのこと。この基礎の部分をドラッカーは別の論文で発展させています。

 

3 合わせて読むべき論文:「企業永続の理論」

6つのステップの中の初めの3つに関して、[三年おきか五年おきに、繰り返して行っていく必要がある]と記されています。この部分を発展させた論文が、「企業永続の理論(The Theory of the Business)」です。両者を合わせて読む必要があります。

「企業永続の理論」でドラッカーは[事業の定義をモニタリングし検証するシステムを作っておかなければならない]と言い、その対策として2つを上げています。一つは、[三年おきに、すべての製品、サービス、流通チャンネル、方針を見直すこと]です。

これが「体系的廃棄」ということになります。[体系的かつ意識的に廃棄を行わないかぎり、単に仕事に追われることになる。行ってはならないことや、もはや行うことのできるはずのないことに資源を浪費する]。その結果、生産性が上がらなくなります。

もう一つは[外で起こっていること、特にまだ顧客になっていない人たちについて知ること]です。[基本的な変化の最初の兆候が、組織の内部やすでに顧客になっている人たちに現れることはあまりない。それは顧客でない人たちに現れる]ということになります。

 

4 「教える仕組み」を作る訓練が必須

「知識労働とサービス労働の生産性」で示した「生産性向上のための六つのステップ」は、はじめの3つと残り3つに二分されます。[第四のステップは、マネジメントの側が][より生産的になりうる人たちとパートナーになることである]。

働く人たちに[生産性と仕事の質を改善するために]どうしたらよいのかを聞く必要があります。マネジメント側は、それを聞いて受け入れると同時に、[生産性と成果に対する責任を組み込むこと]が必要です。働く側もプロとしての責任があります。

これはかなり難しい問題です。日本の場合、ほとんどの担当者がこうすべきであるという考えを持っています。しかし、それを仕組みにするのが苦手です。また提言者に責任ある地位についてもらい、同時に責任を持ってもらうと言ったら、及び腰になりがちです。

第五は、継続して学習することです。[訓練の最大の成果は、新しいことを学ぶことではなく、すでにうまく行っていることをさらにうまく行うべく自ら継続して学習すること]になります。[日本の例が教えているように]とあるように、日本人はこれが得意です。

第六は、仕事を教えることです。[知識労働者やサービス労働者は、自ら教えるときに、もっともよく学ぶ]ということ。おそらく日本ではこのステップが極めて重要な役割を果たすことになると思います。第四のステップを実効性あるものにするためにも必要です。

花形セールスマンの生産性をさらに向上させるため(の)最高の方法は、セールス大会の場で成功の秘訣を語らせることである。外科医の仕事を向上させるための最善の道は、学会で自分の仕事について語らせることである。(p.124 『P.F.ドラッカー経営論集』)

どう教えたらよいのかのプログラムを作り、効果的に教えなくてはいけません。その意味でOJTマニュアルの作成が重要です。これにより出来る人がさらに出来る人になります。学習プログラムを作り、教える仕組みを作る訓練が生産性向上にも必須になるのです。

「知識労働とサービス労働の生産性」を参考に(その1)

 

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