■まだ知られていないOJTマニュアル:生産性向上の強力な武器

 

1 紙のマニュアルがない組織

日本でマニュアルが経営に大きな影響を与えていると見られているのは、マクドナルドやディズニーランドだろうと思います。ところがマクドナルドやディズニーランドでは、紙のマニュアルがないと言われることがあります。

こういう話を聞くと、マニュアルを作成する人たちほど、わからなくなってきたとおっしゃりがちです。業務マニュアルはどうなっているのか、疑問に感じるのでしょう。紙のマニュアルを見て業務を覚えるというイメージがあることも影響していくかもしれません。

仕事をするときに、業務マニュアルを見ながらあれこれ行うということは、まず考えにくいことでしょう。そうなると、業務マニュアルというものは必要なのだろうかという気になるはずです。実際、業務マニュアルがない組織のほうが多いかもしれません。

しかし、業務のオペレーションが決まらないと生産性は上がりません。業務マニュアルが整備されていることは前提になります。その上で業務習得のために組織全体が取り組んでいるということです。これがいかに効率的なことか、意外に気づかれていません。

 

2 業務の習得方法を組織が把握

業務マニュアルがきっちりつくられているなら、それを定着することが問題になってきます。マクドナルドやディズニーのように、業務のオペレーションがきちんと基礎づけられた組織では、業務を習得してもらうために、さまざまな工夫がなされています。

オペレーション全体を理解する人は少人数で構いません。業務全体を貫く価値基準など重要項目は知らなくてはなりませんが、それらはごくわずかです。ディズニーなら、HPにも公開されています。よく言われるように、SCSEというのは優れた価値基準です。

実際の仕事をするときに、どう行動したらよいのかということは、日本では特に体で覚えるということが中心になります。この場合、先輩の行っていることを見たり、先輩から教えてもらったりしながら、日々の業務の中で身に着けていくことになります。

しかし、業務の習得を先輩に丸投げしているだけでは、組織全体の効率は上がりません。習得すべき事項があったなら、それを上手に身に着ける方法を組織は共有しておくべきです。業務の習得は多くの場合、OJTという形態で行われます。OJTの質が重要です。

OJTを組織的に効率的なプログラムにして、指導者が水準の高い指導ができるようにするツールが、OJTマニュアルです。OJTの実施方法を記述することによって、その手法が洗練され、優れた方法が共有財産になっていきます。

 

3 生産性向上の強力な武器

まだOJTマニュアルと言っても、何のことかわからないという人がほとんどです。OJTのプログラムと教え方のポイントを記述したものですと説明すると、それは必要ですね…ということになります。

業務マニュアルの場合、業務に従事する人に向けて、共通の言葉で記述することが原則です。しかしOJTマニュアルの場合、たとえ業務が汎用性の高いものであったとしても、OJTの実施方法は、個別対応を原則にしなくてはなりません。

業務を習得する人に合わせて、効率的な方法を示すのがよいOJTです。だからこそ、OJTマニュアルはプログラムの原則を決めながらも、すべてを標準化をせずに、段階ごとにレベルを確認し、相手の様子をみながら実施していきます。

結果としてその業務を頼めるようになれば、それがOJTの成果です。「いかに早く、いかに高レベルにするか」ということが成果の基準になります。共通の方法と個別対応とのバランスが重要です。

OJTマニュアルの場合、指導する立場なら、項目だけあればわかることも多く、効率的な習得方法の原則もありますから短時間で作れます。毎回、参加者に合わせたマニュアルを作るにしても、数十分から長くても数時間あれば作れるはずです。

おやりになってみればわかることですが、OJTマニュアルの作成原則を習得し、実際に作れる人が養成されたなら、組織の大きな武器になります。生産性を上げるために、これほど効果の高いツールもあまりないだろうと思います。

 

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