■線を引いて本を読む方法:丸山茂雄の読書法

 

1 素直に意図どおりに読むこと

丸山茂雄という人は、丸山ワクチンの開発者である丸山千里博士を父にもち、ソニーで活躍して「ロックの丸さん」と言われたとのこと。癌になったとき、さまざまな治療の中に丸山ワクチンも組み込んでいたそうです。『往生際』という本が出ています。

癌になって何となく、読める気がして固い本を読んでみたそうです。ウェーバーの『プロテスタンティズムと資本主義の精神』、山崎正和の『演技する精神』、プラトンの『ソクラテスの弁明』がとくに面白かったそうです。この人の本の読み方が参考になります。

読むときの姿勢は、<著者の意図どおりに、わりとすなおについていけるわけ。で、ついていけると文章が理解できる>。従来、こうした読み方ができていなかったということです。著者の真意を汲み取るというのは、本を読むときの原則でしょう。

 

2 多色の線を引きながら読む方法

どうやって文章についていったのか、その方法が具体的です。<本に線を引いて読む>ということです。<主語と動詞「私は、好きだ」の間に、何ゆえにっていうところが入るじゃない>、そういう<論旨が、線を引かないと追いかけきれない>からでした。

こうした分析的な読書には小説よりも論理重視の本が向いています。<社会科学系とか哲学系がけっこう面白いな、と思いはじめ>たようです。ラインマーカーのピンク・オレンジ・黄色に加え、<赤鉛筆、青鉛筆を駆使してね>という多色の線になります。

線の色は好みもあると思います。<線引くと本ってものすごく読みやすいってのがわかったんだよ>…ということが大切です。<ダウンロードしてモニターで文章を読むっていうのは、マーカーで線を引けないから頭に入らない>ということになります。

 

3 正確な意味を把握する文法的な読み方

丸山茂雄の方法が独特なのは、<重要だから線を引くっていうのじゃないのよ>という点です。自分の気に入ったところに線を引くのでもありません。内容を正確に読み取るために、多色の線で文の要素を確認していきます。ゆっくり確実に本が読めるはずです。

「主語」「何ゆえに」「述語」を明確にするために色分けするということは、主述関係を中核に、それに対する必要な条件(要件)を意識しながら読むということでしょう。主張の妥当する範囲を意識するということになります。ずいぶん「文法的」な読み方です。

かつて国語塾講師の人と、山崎正和の本を一文一文丁寧に読んでいったことがあります。これはちょっと大変です。しかし、線を引くだけならそれほどの負荷はないのでしょう。主語・何ゆえ・述語がマーカーの3色なのかもしれません。加えて赤・青鉛筆です。

文の主要素はせいぜい4、5個です。英語の五文型なら主語・動詞・目的語・補語の4つ、七文型なら「副詞類」が加わります。どういう要素分けかは不明ですが、発想は同じです。文の構造を意識すると、文の意味が正確にとれます。すばらしい方法だと思います。