■レイ・クロック『成功はゴミ箱の中に』から学ぶ
1 細部を検討してから全体構想を
マクドナルドの創業者レイ・クロックの自伝『成功はゴミ箱の中に』(GRINDING IT OUT)は、「いまも多くのアメリカの学生に読まれ続けている」本だとのことです。日本語版では柳井正・孫正義の対談と解説がついています。一読の価値のある本です。
クロックは1902年生まれで、マクドナルドのフランチャイズ権を獲得したのは1954年、52歳のときでした。それも<瞬く間に成功を収めた>のです。<私の長年にわたるペーパーカップとマルチミキサーのセールスマンとしての経験が役立った>と語っています。
彼は<ディテールにこだわる人間>であり、<完全なシステムを初めから>求める<全体構想パターンでは考えず、まず細部を十分に検討し、完成させてから全体像に取り掛かった。私にとってはこちらの方が、はるかに柔軟性に富んだアプローチだった>とのこと。
2 愚直なほど簡潔に
ディテールにこだわるとは、<一つ一つの作業が大事だという>考えです。ネオンのつけ忘れのような、<人には取るに足りないように思えることの一つ一つが、私には見逃せない重大なミス>になります。これを維持するにはシンプルでないといけません。
第一次大戦後、二十代でピアノ演奏家として雇われた店の<均一価格と簡素なフードサービスは、その後も長く記憶に残>り、後年、<マクドナルドのモットーである「愚直なほどに簡潔に(キープ・イット・シンプル、ステューピッド)」を生んだ>のでした。
マクドナルド兄弟の<話してくれたビジネスモデルは、シンプルで、実に効果的で、大いに感銘を受けた。メニューを最小限に絞っているので、作業効率が非常によいこと…ハンバーガーのメニューはたった二種類>でした。彼はこういうものを求めていたのです。
3 正々堂々と競争するために
クロックは<この国をすばらしい国にしたのは、競争社会だ>と考えます。劣勢に立つ店のオーナーに、<もっとましな15セントのハンバーガーを、迅速なサービスを、もっと清潔な場所を提供すること>を求め、オーナーも<店の再構築>でその後成功します。
<私は競争相手と正々堂々と戦う。強みを鍛え、品質、サービス、清潔さ、そして付加価値に力を入れれば、我々についてくることができずに競争相手は消滅していくだろう>という考えで経営をしています。これはエネルギーのいる方法でもありました。
<私は思考のスケールが小さいと、その人自身も小さいままで終わってしまうと思っている>とクロックは語ります。そのために正念場に立つことにもなりました。苦しい時期を乗り切るために、<問題に押しつぶされない方法を私は学んだ>のです。
<一度に一つのことしか悩まず、問題をずるずる引きずらない>こと。<緊急のメッセージで埋め尽くされている><黒板をイメージ>して<端から消して>いき、<次に、身体をリラックスさせ><平穏な気持ちで眠りに就く>ことで危機を乗り切ったのでした。