■ノウハウを作る能力:OJT・教育用マニュアルの作成について

 

1 ノウハウに3つのレベル?

11月にOJT・教育用マニュアル作成講座を行うことになりました。少しずつ講座の準備をしています。ノウハウの継承を含めた社内学習について、ちょっとおもしろい意見がありますので、それにふれてみます。テクニックよりもコツをつかめ…という提言です。

もうずいぶん前に読んだ本ですが、今回のテキスト作りのために引っ張り出してきました。古谷昇『もっと早く、もっと楽しく、仕事の成果を上げる法』です。この本で古谷は、人の活動に関するノウハウには3つのレベルがあると書いています。

3つとは、①意気込みでやる、②手法、テクニック、知識でやる、③コツでやる…です。頭のよい人が言いそうな話でしょう。①はノウハウではありません。ノウハウ(know how)というのは、どのようにするかを知る…ということです。以下で見て行きます。

 

2 ノウハウになる2系統

レベルの高いことを教えようとする場合、知識や手法だけではどうにもならないことがあります。したがって、コツを知ることは重要ですし、レベルが高いことは確かです。しかし、必要な知識、手順やテクニックを知ることが無意味だと言うことにはなりません。

古谷は①を排除し、②を<いまひとつ物事の本質には遠い。これらを身につける方法は、ほとんどが「お勉強」形式によるものだからだ>、<応用できるか否かの汎用性についても、そんなに多くは期待できない>と切り捨て、③を<オススメ>しています。

ノウハウには、知識・手法を身につけるものと、コツを身につけるもの…の2つがあります。二者択一ではありません。<コツを会得することでノウハウを身につけるというのは、経営コンサルタントに向いている方法>とのこと。実務者には両方が必要です。

 

3 ノウハウを作る能力

大切なことは、ただの知識の寄せ集めではいけないということです。それはノウハウではありません。その程度なら「お勉強」形式と言われても仕方ありません。ノウハウにするには、必要な知識の習得を前提にして、使える形式にまとめることが求められます。

使える形式にすることが、手法やテクニック・手順、あるいはコツになります。付加価値を生む業種では、これらを自ら作り上げることが求められます。既存の手法やテクニックだけで済まそうとしていたら、ビジネスの展開に追いつけません。ここが問題です。

ノウハウを作る能力が問われます。上手な手順にしたり手法やテクニックにする、あるいはコツを抽出することが必要です。OJTや教育訓練で成果をあげるには、組織のノウハウ作成能力が基礎になります。またノウハウの有効性を確認・検証することが重要です。

知識を教えるなら反復と確認が必要になります。コツを教えるなら、実践でコツの有効性を確認することが必要です。こうしたノウハウを測定・評価する仕組みを意識しておくべきでしょう。作成能力には個人差が大きいため、ノウハウの評価がきわめて重要です。