■情報の組織化と体系化

 

1 情報の有効利用のために

体系化のことを何度か書きました。これからどうしても必要になるからです。いまWebで、情報を発信する人が増えています。今までと比べて圧倒的に情報量やデータが増えています。自分達の経験だけでなく、こうした公開情報の有効利用が重要になっています。

ビジネスでは、自分達がもっている顧客の情報以外のことは、外の世界から吸収することになります。たくさんの情報が公開され、それらに貴重な情報が埋もれています。そこから情報を見つけ出して、使えるようにできるかどうかで、大きな違いが出てきます。

使えるようにと言うことが重要なポイントでしょう。一つ一つが貴重な記録であっても、自分達が使えるようにするためには、情報を体系化する必要があります。その前提として情報を組織化する必要があります。では組織化は体系化と、どう違うのでしょうか。

 

2 情報の組織化

畑村洋太郎は『失敗学のすすめ』で、2万件の失敗記録を集めたのに失敗が減らない…と自動車メーカーから相談をうけた話を紹介しています。この事例で、失敗というカテゴリーに当てはまる2万件の記録を集めたことが、情報の組織化にあたります。

メーカー側は、情報の組織化をしたのですが、失敗を減らすことができませんでした。畑村は失敗を減らすために、情報を「知識化」しないといけないと主張しています。情報やデータを使えるように加工することを、畑村は知識化と呼びました。

このケースで畑村の提案は、2万件の失敗記録を300以下のパターンにまとめるようというものでした。300以下なら、人間が使える数だという考えでしょう。ただ、パターン分けだけなら情報を分類したにすぎませんから、情報の組織化の範疇にとどまります。

 

3 体系化の練習

体系化の特徴として、使えるようにする作用に加えて、全体像が見えるようにするという作用が必要になりそうです。2万件の失敗記録を300のパターンにまとめ、それをどういうステップで使うのかの仕組みを作ったならば、失敗の体系化ができたことになります。

私たちは体系化の練習が必要です。物事を体系化するとき、まず母集団を作ります。同一のカテゴリーに入るもの、あるいは時系列で並べたものなど、一定の枠内に入る情報を集めることです。知らないうちに私たちはやっていたことでしょう。情報の組織化です。

この母集団の数が一定数蓄積されないと、体系化があやしくなります。ただし、多ければ多いほどよいわけではありません。一定数が集まったなら十分です。そこから全体像を描く練習をしていきます。仮説を立てて、それを検証することの連続です。

こうした体系化の練習は、何度かやることによってだんだん簡単に出来るようになります。自分なりの仮説を作る訓練が、そのまま読解の訓練になるのです。練習の継続によって、すぐれた体系から学ぶことができるようになると、仮説作りもさえてきます。