■戦略の定義について:『戦略とは何か』をめぐって

 

1 ドラッカーの推薦する本

ピーター・ドラッカーは、1964年出版の Managilng for Results (成果のための経営:『創造する経営者』)を上梓する際に、 Business Strategies(「事業戦略」)というタイトルにしようとして、出版社から拒否されたことがあったようです。

2003年にアメリカで出版された『戦略とは何か』(デ・クルイヴァー、ピアース)に寄せた巻頭の文章で、ドラッカーは<「戦略とは何か」「なぜ戦略が重要なのか」を問うているのは私の知る限り本書だけであり>…と書いています。内容が気になります。

第1章「戦略とは何か」を見ると、<「戦略」といわれているもののほとんどが、実際には戦略と何の関係もないのである>とあります。たしかに「戦略」という言葉は濫用されています。戦略の定義が明確になっていないからだとも言えそうです。

 

2 『戦略とは何か』での定義

『戦略とは何か』では、戦略の定義の共通点をベースに定義を示しています。<戦略とは持続的競争優位性(sustainable competitive advantage)を達成するためのポジショニング(positioning)を構築することである>…とあります。つまり、以下です。

どの業界でどのような製品・サービスを提供するか、そしてどのように資源を配分するかなどの選択をすることこそが戦略なのである。戦略の最終目標は、顧客に価値を提供することで、株主をはじめとするステークホルダーに対する価値を創造することである。

これだけでは、まだよくわかりません。この本での定義は、さまざまな「戦略」の定義の共通点をもとに作られているため、この定義の展開だけでは、本書の特色は見えてこないようです。幸い、類似の概念との違いについて説明があります。

<戦略と、業務効率の改善に焦点を当てた手法や経営理念には決定的な違いがあ>って、後者は、<本質的に「戦術的」>です。<戦略は競合他社と異なる方法で行うことに焦点が当てられる>とのこと。戦略と戦術の違いを認識するようにということでしょうか。

 

3 シンプルな定義を

業務を構築・運用・改善する過程は、目標を達成するためのものですから、戦術の範疇でしょう。一方、戦略は、他社と「異なる方法で行うこと」、つまり<戦略の本質であるユニークな競争上のポジション(unique competitive positioning)を選ぶこと>です。

これによって、<模倣障壁(barriers to imitation)が築かれる>ということは、ユニークなポジションなら、真似できないということなのでしょう。戦略の捉え方としてはユニークかもしれません。しかし、あまり役に立ちそうにありません。

本書も、戦略の本質が「選択して構築するもの」だとの原則をとっています。文書作成の視点からすれば、抽象的な定義は具体化できないので無意味だということになります。ユニークな定義では汎用性がありません。戦略はもっとシンプルに定義すべきです。

戦略とは、目的を目標に変えるものです。その結果、(1)ゴールの決定、(2)ゴールへのルートとステップの提示、(3)成果を評価する基準の提示…という目標の条件が整備されます。この際、その内容が他社と異なりユニークなのは重要なことでしょう。

★追記 : 目的、目標、戦術に関して、何となくわからないという方は、[ホンダの「A00」をめぐって:目的・目標・手段] …をご参照いただけたら幸いです。

 

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