■業務システムと業務マニュアル
1 BRMS見学に参加
先日、業務システムの専門家の方々が、新しい業務システムの説明を受けている場面に立ち会わせていただきました。大企業で伝説のリーダーだったり、社長賞をとった人が、つぎつぎ質問とコメントを繰り出します。たいへん刺激的でした。
BRMS(Business Rule Management System)というソフトウェア自体はもう何年も前からあったもののようです。昨年、商社のシステム部長さんから、BRMSの資料を送っていただいた上で、業務マニュアルとの関係を聞かれたこともありました。
BRMSでは、しばしば変更にさらされる料金計算などのルールを独立させて管理できるようになっています。ここでのルールは定量化できる形式のものです。数式の変更があったときに、容易に変更ができて、テストもできるようになっています。
2 定量化の有無に違いあり
業務マニュアルとの違いはどこにあるのでしょうか。この違いには、業務システムがなすべきことと、人間がなすべきことの違いが反映されています。定量化された決まりを正確に反復することは、人間より機械が得意です。これは機械に任せたほうがよいのです。
人間の強みは、あいまいな条件の中で、かなり正確な判断が出来るところにあります。定量化され、答えが一律に決まる領域に関して、人間の優位性はありません。さらに言えば、あいまいな条件下で、正確な判断が出来る人が有能だということになります。
業務マニュアルにおいても、前回書いたように、業務上のルールが記述されることが必要です。同じくルールではありますが、先のシステムのルールと業務マニュアルのルールでは、ずいぶん違ったものになります。
業務のマニュアルでもシステムでも、ルールが大切であるという点では共通しています。ルールの記述の際に、用語の統一をはじめとした記述の標準化が必要な点も同じです。しかし、業務マニュアルのルールは定量化されてはいません。ここが大きく違います。
3 業務マニュアルの中核的内容
より本質的な違いは、頻繁に変更されるかどうかという点にあります。業務マニュアルに示されるルールの基本は、あまり変わってはいけないものです。中島一は『意思決定を間違わない人の習慣術』で、すぐれた人の意思決定の特徴として3つを上げています。
(1)自分自身の意思決定の手順について説明することが出来る
(2)その手順は、どれも複雑でなくシンプルである
(3)大きなことでも小さなことでも、決定するときには同じ手順を使う
業務マニュアルの中核になるのが、これです。ホンダの久米是志元社長がつくった技術開発マニュアルは、<基本的には目的、目標、手順を体系的に因果関係で整理することを求めたもの>であり、社内で、この手順の徹底が図られたということでした。
こまかな作業手順は、業務マニュアルの中核的な内容ではなくなっています。中心にあるのは、各業務を進めるときの判断基準とそのルール、そして業務品質です。さらに業務の全体像が見えて、自分の業務の位置づけがわかるという機能が必要となります。