■操作マニュアル作成の基本:自動車の製品マニュアル事例

1 自動車の製品マニュアル事例

先日、大手自動車メーカーの製品マニュアル作成について、興味深いお話をお聞きしました。作成の支援をしたという会社の方のお話です。メーカーの戦略車という位置づけらしく、マニュアル作成にたいへんなエネルギーとコストをおかけになっていました。

今回のケースでは、マニュアルのプロトタイプ(叩き台)を作って、それを実際に使って評価する手順をとったとのことでした。マニュアルやテキスト作成の場合、これが王道です。システムの開発でもプロトタイプアプローチが有効なようです[新しい眼科]。

ただ、今回のお話を聞くと、私たちの手法と違いがあるようでした。実際に使って検証することは必須ですが、検証する段階があまりにも遅すぎると感じました。それ以前に、操作マニュアル作成の基本がないがしろにされていないか、という疑問を持ちました。

2 プロトタイプアプローチの基本

マニュアルを作る際、どういうものにしたいのか、イメージのすり合わせが重要です。より良いモノにするためには、全体の構成と共に、複数のサンプルを具体的に提示することが必要です。そうすれば、どこをどう直したらよいのか指摘が可能になります。

今回のお話では、一通りマニュアルが出来たので、使って評価したとのことです。外部からの支援の場合、仕方のない面があるのだと思います。しかし、全体のラフスケッチが出来たらなるべく早い段階で検証・修正をしないと、無駄が多くなってしまうのです。

先の「新しい眼科」にあったシステム作りでも、<いかに頻回にプロトタイプ作成→テスト→反映を繰り返すことができるかがポイント>で、<それには、“できるだけ早くプロトタイプを作る”こと>が必要だと書かれています。その通りだと思います。

3 基本作業:時系列確認と空間把握

さらに今回のお話で驚いたのは、評価内容についてです。マニュアルを使ってみると、車内の作業と車外の作業が混在していて、車から出たり入ったりで大変だったそうです。そのため車内の作業をまとめて、最後に外での作業をするようにした…とのことでした。

最初に基本的作業を行わなかったということでしょう。操作マニュアルを作る際、操作の時系列確認と、どこで行われるかの空間把握は前提になります。どの順番が正しいのか、あるいは順番は関係ないのか、こうしたチェックが必要です。空間の把握も同様です。

それでは、なぜ最初に時間軸と空間を確認しておくべきなのでしょうか。この二つは、客観的に評価できるからです。どういう時系列で操作が行われるのか、どこで操作が行われるのか…は、主観の入り込まない客観的な事実として把握できます。

操作には正解があります。実際に行ってみるまでもなく、効率的な手順の大枠は時系列と空間から判断できます。作業が車中なのか車外なのかは、最初の段階で確認しておくべきものです。混在がまずいことは、検証するまでもなく、客観的にわかる事柄なのです。