■若いコンサルタントのレポートから:ビジネス文書の書き方
▼最初に大切なポイントを書く
4回にわたってビジネス文書の書き方というテーマで書いたことがありました。ちょうどよい例がありましたので、この事例を見ながら、ビジネス文書の書き方について、振り返ってみたいと思います。
現在、IT企業でコンサルタントをしている若者から、商品管理に関するレポートを見せてもらいました。A4一枚にまとめられたレポートは、まだ叩き台のレベルだということでした。なかなか内容のあるよいレポートになりそうです。
しかし現状では、まだ物足りません。「ビジネス文書の書き方3」に書いたように、自説中心で書けば、もっとわかりやすいのにというのが最初の感想でした。A4一枚ですから、はじめの部分で他の方式について記すのは、あまり意味がありません。
最初に、自説を出したほうがよいと思います。他の方式については、あとで一言触れる程度で十分でしょう。項目を立てる必要はありません。はじめに、一番の中核となる自説の結論を簡潔・的確に提示してしまったほうがよさそうです。
これは、読む側にここがポイントですよ…と知らせることになります。最初に、これが私の考えですと示すことは、それを浮き立たせますから、効果的です。はじめの部分で、読み手の関心をつかむ必要があります。
▼プロセス化と定量化が重要
もうひとつ気になったのは、このレポートだけでは、具体的な導入方法がよくわからない点でした。コンパクトなレポートですから、詳細なことまで説明するのは無理でしょう。しかし、導入のために必要な手順全体が見えるように、流れを書く必要があります。
先日、業務マニュアル作成について商社の部長さんとお話したとき、面白いお話をなさっていました。水割りの作り方をネットで調べたら、とてもよくわかって、実際においしくできた、プロセスと数字が大切だと思ったとおっしゃるのです。
水割りをあまり意識しないで、適当に作っていたけれども、作り方がプロセスになっていてよくわかったし、その順番で進めていって、7回かきまわすと数字で書いてあるので、その通りやって、うまくできたということでした。
業務マニュアルもこう書く必要がある、とおっしゃっていました。まさに、その通りです。業務をプロセスに分けて、可能なかぎり定量化して伝えると、理解しやすくなります。すべての業務に適用するのは無理かもしれませんが、工夫する余地はあるはずです。
これは業務マニュアルだけでなく、レポートでも同じことです。「何をすべきか」だけでなくて、「どうやって実現するか」まで書かないと、検討できません。採用してもらってこそ、意味があります。これは「ビジネス文書の書き方2」に書いたことです。
▼新しい組み合わせはシンプルかどうか
さすがに優秀な人のレポートでしたから、可能性を感じました。そして、できたらここまで書いてよという希望も持ちました。導入の目的とその基礎になる価値観を示してほしいという希望です。
客観的な判断をする際、価値を入れないほうがよいという考えもあります。しかし、これは理論のお話です。ビジネスに唯一の正解はありません。何かを決めるとき、何を優先させるかが大切です。目的とその基礎となる価値観は、決定に必要な情報です。
以上は、ビジネス文書を書く方法ではありますが、書くに先立って、何を考えないといけないかというお話でもあります。頭の中に、必要な材料がそろっていても、それで十分というわけではありません。上手に組み立てる必要があります。
「既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く」必要があります。『アイデアのつくり方』でヤングが言う通りでしょう。これは、「ビジネス文書の書き方4」でも言及しました。そして、できあがった組み合わせが、シンプルなものかどうか、これも大切です。
ビジネス文書の筋のよしあしを考えるとき、骨格がシンプルかどうかは、重要な判断基準になります。