■「は」と「が」をめぐって その7

▼「は」と「が」:厳格な区分はあるか

「は」と「が」の使い分けを考えるときに、気をつけないといけないことがあります。「は」でないと違和感をあたえる言い方と、「が」でないと違和感をあたえる言い方がある一方、どちらでもよい事例がたくさんあります。

本来の使い方がどうであったとしても、慣習によって、違和感がなくなった言い方なら、それは否定できません。ここからこっちが「は」で、あっちは「が」だという風に厳格に分けられません。

 

▼ルールを立てるときの注意

たとえば、「昔むかしあるところに」がなかったら、「おじいさんは山に行き、おばあさんは川に行きました」という言い方だけが適切だ、とは言えなくなります。文脈という要素をどこまで認めるべきか、なかなかの難問です。しかし実例を見ればわかるはずです。

上記の例文の「は」を「が」に変えてみましょう。「おじいさんが山に行き、おばあさんが川に行きました」となります。この文に違和感を感じることはないと思います。

ルールを立てるとき、注意が必要なのです。「は」でないとまずい場合、「が」でないとまずい場合、どちらでもよい場合という分類を考慮したうえで、ルールを作らないといけません。

 

▼焦点の強調について

主体でなく「焦点」を強調する形の場合、「は」が正しくて、「が」はつきません。高さんの第4ルールを修正すると、「ミカンを食べない」のうちの「ミカン」を強調する場合、「ミカンは食べない」となります。

こうした強調は、例外にとどめるべきでしょう。あいまいになるためです。しかし、事項を並列するとき、焦点を強調したほうが自分の意図を的確に表現できることがあります。このとき、焦点を強調しているということを意識して使ったほうがよいと思います。

 

▼筆者の意図を意識する

「は」と「が」の違いを意識することは、筆者の意図を読み解くのに役立ちます。例えば、2つの例文で見てみましょう。
(1)「A子は先を歩き、B子は後をついていった」
(2)「A子が先を歩き、B子が後をついていった」

(1) の場合、「A子」と「B子」を強調して、両者の違いを際立たせています。(2) の場合、「A子」を選択して「先を歩き」と結びつけています。「B子」を選択して「後をついていった」と結びつけています。

高さんの第2ルールは、≪主題(主格)を強調する場合、主題(主格)の後に「が」を使う≫…でした。これを「ブログ・その5」で修正しました。

「が」を接続する場合、筆者が選択した項目を、述部と結びつけるニュアンスがある。
「は」を接続する場合、項目を客観的に強調して、他項目と区別するニュアンスがある。

どちらが正しいというのではなく、ニュアンスの違いがあるのです。上記の例文(1)(2)の違いは、筆者の意図、ポイントの置き方の違いなのです。