■ノウハウの共有について:利用と評価基準

 

1 電子化した文書の利用状況

かつて大企業で文書の電子化を進めた方にお話をお聞きしました。お客様に書類を渡しても、紙で保存しておいた場合、何十年かするとなくなってしまうとのことでした。設計図などがなくなってしまうのは、お互いの損失です。

電子化すれば、そういうものの保存が楽になるから、電子化を進めたとのことでした。保存方法を確認すると、やはりアプリケーション依存はダメだとおっしゃっていました。写真に近いものでないとまずいですよねと確認すると、その通りとのことでした。

設計図などは、電子化のメリットが大きくあります。しかし、電子化した後に、文書を省みることは、ほとんどありません。この点をお聞きすると、電子化は文書の墓場だよというお答えでした。何でも残しておけるけれども、見返すことがないということです。

 

2 ノウハウ利用の前提

たくさんのノウハウが文書の中にあっても、それを利用しないことが多くあります。このことは、何度となく言われていますし、直接どうしたらよいのかのご相談もあります。大切なのは、ノウハウをどう位置づけているかです。

ノウハウを大切にして、それを利用する意識がないと、ノウハウの利用はうまく行きません。せっかくのノウハウをどうやって利用したら良いのか、その仕組みを作っておく必要があります。そのとき大切なのは、評価ということです。

ノウハウの評価基準を持っておくことが、利用の前提になります。評価の高いものなら、利用価値が高いと判断できますから、利用が促進されます。こうした評価制度を考える組織であるならば、ノウハウの集め方についても仕組みを作れるはずです。

 

3 ノウハウの評価法

ノウハウの評価について、かつて楽器メーカーの方から、映像で残したものがうまく使われていないというお話がありました。どうしたら良いのか、切実な問題になっていたようです。このとき申し上げたのが、ノウハウの評価についてでした。

ノウハウはどうしても属人的になります。人に依存し、その人の実力に依存します。利用価値を評価してみると、貴重なノウハウを持つ人が、いかに少ないかがわかります。実際に使えなかったら価値がありません。ノウハウと言えるかさえ疑問になります。

ノウハウの項目を一つの軸にして、もう一方の軸に誰のノウハウであるかをもとに参照の優先順位を決めていきます。評価の高い順に検証することになります。その結果をフィードバックしていきます。だいたいこれが標準的なノウハウの利用法になりそうです。