■シリトー『私はどのようにして作家となったか』:文章を書くための王道
1 独学の作家シリトー
アラン・シリトーはイギリスの作家です。『長距離走者の孤独』がかつて、よく読まれました。シリトーの『私はどのようにして作家となったか』という本に、[僕は、どうして作家になったのかという質問をときどき受けることがある](p.19)と記しています。
[ぼくは十四歳から教育を受けていないから、どうして読み書きができるようになったのか、人びとが知りたがるのは当然だと思う。読み書きこそ、作家になることのすべてである]、そして[ぼくにはこれ以外になるものがなかったのだ](p.19)と言うのです。
14歳以降、工場で働き、19歳でイギリス空軍に入隊しましたが、派遣されたマレー半島で肺結核となり、1年半、病院で過ごします。[それまでぼくは大人の小説を読んだことがなかった。そしていま多量に、遅まきの読書のたのしみがはじまった](p.27)のです。
2 グレイブスとの出会い
本を読んだからこそ、書くことができるようになりました。はじめは[未熟でこっけいな表現上の不均衡を、エネルギーと冗漫とでおぎなっている。ぼくは一つですむところに十の形容詞をもちい、一頁に同じ言葉を何度もつかい、繰りかえした](p.30)のです。
シリトーは、作家のロバート・グレイヴスに手紙を出し、会いに行きます。クレイヴスはオックスフォード大学に入学が決まっていたのに、従軍志願をしてフランスに出征し、そこで重傷を負い、帰国して療養後に、大学に復帰した人でした。苦労しています。
グレイヴスはシリトーと[貧乏のことをひとしきり語り合]い、[マジョルカ島でどのようにして暮らしをたてているのかとたずね]、シリトーは[空軍に行ってて病気になったので、年金が入ると答えた]のでした(p.40)。この人に励まされて作家になります。
3 文章を書くための王道
シリトーはマジョルカ島で健康を回復し、[もとのような健康にもどった気がした](p.42)のです。そこでマジョルカ島方言のスペイン語と、フランス語を覚えました。[その知識はぼく自身の言語を根本的に把握するのによい方法]であると気づきます(p.43)。
雨や雪の日などには、結婚した妻と[大声を出して、毎晩二、三章ずつ本を読みあ]いました。その結果、[美しい英語の流暢さや明快さを確かめるために、このような方法で自分の物語や文章を読むことは有益だということがわかった]のです(p.43)。
辞書や語法辞典を調べ、[ぼくは類語をひろいあげた。きまり文句、誤った語句、たいして意味のないくだらない言葉を除いた。ぼくははっきり述べないで意味をほのめかせたような所を削除した]、[明確な英語を見つけ出さなければならない]のです(p.44)。
まず読むことから始まり、書き始め、自分の言葉を分析する方法を見出し、書いたものを音読して確認し、文章を修正していきます。作家でなくても、私たちが文章を書く場合に、これらが必要でしょう。文章を書くための王道が語られているように思いました。
