■知識・情報革命の時代:グーテンベルク革命と現在

       

1 グーテンベルク以前の状況

グーテンベルクの活版印刷は、世界に大きな影響を与えました。15世紀半ばに、初めて印刷された聖書が作られました。書物の量が一気に拡大して、知識・情報革命が起きたともいわれます。宗教改革にも、ドイツ語訳の聖書の出版が大きな影響を与えました。

玉木俊明は『人に話したくなる世界史』で、[商人と文字情報について、グーテンベルク以前の状況]に触れています(p.89)。13世紀から14世紀に、商取引が拡大し恒常化したことから、ハンザ商人が都市に定住して、取引相手と手紙のやり取りがはじまりました。

文書で通信するために文字の読み書きが必要となり、ハンザ商人が文字を書きはじめます。[15世紀になると、低地ドイツ語が支配的になり](p.90)、[公用語のラテン語から俗語である現地の言葉に、聖職者から商人に]という移行がイタリアでも進みました(p.91)。

      

2 商業活発化による各国語の形成

玉木は[近代以前においては、言葉というものは、まず「音声」によって教育され]、その結果、[同じ言語でも、スペリングは必ずしも一定してはいません]と指摘します。それが商取引の拡大により、統一化されていくことになります(p.91)。

[商取引上の規則が統一化され、商人の間での契約が私的なものから公的なものになると]、[商業書簡や契約書などのスタイルが徐々に統一]化し、[その過程で、「正しいスペリング」というものが次第に確立して]、各国語が形成されていきます(p.91-92)。

▼ルターの宗教改革(1517)に先行するかたちで、商業の世界では、情報発信・知識の担い手としての聖職者の力が衰退し、それに代わって商人が、新しい担い手として登場してきたことがわかります。そこに出現したのが、グーテンベルクが発明した活版印刷術だった、ということになります。 p.92

     

3 新しい知識・情報革命

その後、商人の手引きとなる本が出版され、それが商業のマニュアルとなり[商業のルール、交渉術、一人前の商人にするための教育法](p.92)などの商慣習が確立していきます。[ルールの均質化が進み、それだけ市場への参加が容易になったのです](p.94)。

生きるために切実な商業取引のために[「商売の手引」は、カトリックやプロテスタント、ユダヤ教といった宗教・宗派と関係なく広がっていった](p.95)でした。求められる技術が登場して、その利用によりそれまでの変化が、急拡大することがわかります。

デジタル化とWEB化の流れも、さらにはAIの利用拡大も、グーテンベルク革命と同様な、大きな変動に違いありません。同じような「知識・情報革命」です。巨大な量の文字・画像・動画がやり取りされるようになっています。大切なのは何を伝えるかでしょう。

何を伝えるのかを考えるときに、思考を整理していくこと、それには記述していくことが重要になることは間違いありません。何をどう考え、どう表現するかが重視されていくことになります。基本に帰ることが必要でしょう。書物に帰れという思いになります。