■読み書きのルールという強力な武器
1 文章・文書の必要性
年度末の予定を入れ、学生たちの就職活動につきあい、さらに来期の講座の企画を作るうち、何だかいろいろなことがいっぱいいっぱいになってきました。しばらくぼんやりして、やっと体調が戻ってきた感じです。色々なことが中途半端になってしまいました。
新設の講座案を見ると、いくつか特徴的な傾向が見えます。まず文章や文書に関係するものがほとんどです。図解にしても、文中で効果をあげる図表は何か…というコンセプトが表に出ています。書くばかりでなく、読んで分析する講座も実現するかもしれません。
読み書きの重視は、今年の就職活動でも感じています。そして新入社員たちの文章のレベルが心配になるのも分かる気がします。組織内での情報流通の中心が文書であることは、今後も変わりそうにありません。作成する文書の質とスピードが問われます。
2 感覚とルールによる文章の習得
読むことと書くことは、車の両輪のようなものなのかもしれません。しかし、同列ではなくて、読むほうが先行するというべきでしょう。自己流の勝手な書き方では正確に言いたいことが伝わりません。正確に伝えるためには的確な言い方に従う必要があります。
どういう文章が相手に伝わるのか、そのルールを習得するためにも一定以上の文章を読む必要があります。読むことによって、文章の書き方が感覚的にわかってくるものです。いきなりルールを当てはめて文章を書くのではなく、まずは感覚的に書くことになります。
問題は文章を書いた後です。日本語の場合、語順がわりあい自由ですし、どちらの言い方も間違いでない事例がたくさんあります。そうなると、間違いでない文章の中でも、場面ごとに、どういう文章が適切なのかということが問われることになります。
文章の感覚に優れた人は、理屈なしにその都度、適切な文章が書けてしまうのかもしれません。しかし、それは例外ですし、学術的な文章やビジネス文の場合、感覚に加えて文章のルールを意識する必要があります。ルールに基づいたチェックが必要です。
3 語句の選択と語句の並べ方のルール
一文一文は、語句を並べることによって成り立っています。文の良し悪しを決めるのは語句の選択とその並べ方といえます。どういう語句を選んだらよいのか、どういう並べ方をしたらよいのかという基準が問題です。正確に迅速に伝わることが条件になります。
どういう語句を選んだらよいのかと言えば、言いたいことが正確に伝わる言葉を選ぶということです。そのとき正確に表現できる言葉がたった一つしかないのは例外です。複数ある中から一番わかりやすい、伝わりやすい言葉を選ぶとことが選択基準になります。
語句をどう並べるかということは、意外に面倒です。日本語は語順がかなり自由ですから、その都度、さまざまな語順が成立します。こういう場合、感覚で決めているはずです。ルールが先行するわけではありません。しかし、基本的なルールがあるはずです。
日本語の標準的な並べ方というのはあるのでしょうか。もしあるならば、それが日本語の基本構文になるはずです。英語の場合、品詞という基準、語順のルール、さらにSVOCといった文の要素に基づく基本文型があります。日本語とはかなり違いそうです。
先日この欄で、文章の基本を書きだしたものの途中で止まってしまいました。また再開したいと思います。文章のルールのことですから、最初から最後まで簡単なばかりではありません。しかし最初は取っつきにくくても、習得すれば強力な武器になります。