■業務について:岡崎久彦の情報戦略論を参考に その1
1 業務構築の道具となる業務マニュアル
業務を考えるときに、マネジメントとの関係を抜きに考えることはできません。業務マニュアルを作るときに、現状を記しただけで終わりにしたら、もったいないというしかありません。現状を見て、業務の検証作業が必要ですし、それをする価値は十分あります。
業務マニュアルが業務の構築を考える道具になっています。業務マニュアルを作ることは、現状を見える形式にして、それに基づいて業務を検証する機会になります。業務マニュアルの再定義が必要になっているのです。言い始めてから10年になります。
業務とマネジメントの関係について、ドラッカーが「企業永続の理論(The Theory of the Business)」に記していることが原則になります。環境を分析して、成果を定義して、強みを生かすということです。しかし環境分析が抜け落ちることがよくあります。
2 環境分析が一番の基礎
環境分析は一番の基礎になるものです。ビジネスの世界でも戦略という言葉が一般化しました。国際関係を考えるときの「戦略」がビジネスでも重要になっています。戦略の基礎になるのは情報です。この間の事情について、岡崎久彦が語っています。
▼何か問題があって解決しようと思ったとき、問題点がすべて見えて整理されていれば、それを解決する方策、つまり戦時はおのずから道筋が見えてくる。これが私の戦略論である。 p.12: 『情報戦略のすべて』
日本のように[自分の力で世界の情勢を変えることのできない国]の場合、プロシア型の[目的をはじめに設定して任務遂行のために全力を尽くす]ものよりも、[情報を見極めて、出来る範囲の中で最善の選択をするアングロ・サクソン風戦略]が向いています。
もう少し具体的に言えば、[国際情勢の動向を察知して、その流れに乗りながら、その流れの限られた範囲で、国家理想の実現を追求し、あるいは国益の伸長を図るということ]です。国を組織(会社)に読みかえれば、そのままマネジメントの基本になります。
3 つねに変わっていく業務
状況はつねに変わりますから、業務のあり方もそれに伴って、変わっていきます。業務を考えるときに基礎になるのは、与えられた状況の中で、自らの成果を見極めて、そのために自分たちの強みを生かす仕組みを作り上げていくことになるでしょう。
自分たちが今後どうあるべきかを考えるとき、その前提として、現在の状況がどうなっていて、どうなる情勢なのかを把握しておくことが不可欠です。表だって語る語らないの違いはあっても、強い会社のトップの情報分析能力は際立っているように思います。
業務を考えるとき、業務を記述する能力が不可欠なのは自社の現状を知るためです。この基礎に加えて環境分析が必要になります。経済指標など関心もなく見たこともないという人が、業務のプロになれるのでしょうか。昨年後半から気になっていることです。
⇒この項、続きます。