■読まれる文章の書き方:『文章は読むだけで上手くなる』を参考に

1 文章を構成する2種類の文

ビジネスで使う文章は実用的なものです。実用文という言い方もされます。そこでは成果や効率が問われます。成果というのは文章に実質的な内容があることです。効率というのは早く読める文章、つまり「読みやすい文章」「わかりやすい文章」ということです。

ビジネス誌の編集長だった渋谷和宏は『文章は読むだけで上手くなる』で、実用文のセオリーを語ります。<シンプルでやさしいセオリー>を意識すれば、<読みやすい文章、わかりやすい文章を身につけられる>とのことです。記事はどう書かれるのでしょうか。

渋谷は、文章を構成する文を2種類に分けて解説しています。①小段落を代表する文の「リーダー(牽引役)としての文」、②証明や補足や説明する文の「フォロワー(付き従うもの)としての文」の2つです。この2種類を意識することが第一歩になります。

 

2 三角型と逆三角型の二つのタイプ

渋谷が示す文章のルールその1は、<リーダーとしての文を小段落の先頭に置き、フォロワーとしての文をその後に続ける>ということです。<このルールを守った文章は、中身を示すラベルがきちんと貼られた箱のようなものです>と記しています。重要です。

ルールその2は、<「リーダーとしての文」をつなげて読むだけで文章全体の流れがわかるように「リーダーとしての文」を並べる>ことです。つまり、<「リーダーとしての文」をつなげると明確なスケルトン(骨格)が出来上がる>よう文章を書くのです。

スケルトン(骨格)には、三角型と逆三角型の二つのタイプがあり、逆三角型に書くことを原則としています。<▽(逆三角)型はインパクトのある一文もしくは小段落で文章が始まり>、<「著者は何を言いたいのだろう」と読者の好奇心を書きたて>る構成です。

 

3 文章構成のための4つのプロセス

逆三角型の例を渋谷は提示しています。<「仕事とは山登りやランニングのようなものだと思う」と突飛なたとえが冒頭に示され>、中盤で<突飛なたとえで文章を始めた意図を種明かし>していきます。こうした構成にするために、4つのプロセスがあります。

1. 最も伝えたい内容あるいはメッセージを決める
2. なぜそう思うのか、理由を言葉にする
3. 大ざっぱなスケルトンを作る
4. 導入部分を考える

1では<思いつくまま、いくつでも口にしたりメモに書きとめたり>するうち、<やがて「私が伝えたい内容(メッセージ)はこれだ!」とピンと来る言葉に出会う>ということになります。2も<書き連ねているうちに理由が明確になっていくはずです>。

3のスケルトンを作るとき、<どのようにつなげれば論旨が明快になるか、ただそれだけを注意してください>と渋谷は言います。そして<ハードルの低い△(三角)型のスケルトンを始めに作る方が頭の中を整理しやすい>とも言います。あれれれ…と思います。

 

4 記事とビジネス文の違い

三角型というのはどういうスケルトンなのでしょうか。読者の好奇心をかきたてるのではなく、<おとなしいスケルトン>です。<これから何を書きたいのかを冒頭で示した後で、それを具体的に強調するエピソードやコメントを紹介します>。以下が事例です。

*日本の人口が劇的に減っている。
*このような激しい人口減少は経済・社会に暗い影を投げかけている。
*しかし一方でライフスタイルの変化がビジネスチャンスを生んでいる。
*その代表はおせっかいな家電・IT製品だ。
*それだけではない。人口減少はサービスの分野でも新たなビジネス生んでいる。
*日本社会・経済に暗い影を投げかける人口減少をビジネスチャンスに変え、自らの仕事に生かす――そんなしたたかな姿勢も僕たちビジネスパーソンには必要ではないか。

ビジネス人が書くなら、この構成で問題ありません。逆に実質的な内容が心配になります。人口が「劇的に減っている」根拠となるデータが示されなくては、骨格など作れません。記事の場合、読者を引き込むインパクトのある文章が必要なのかもしれません。

このあたりが記事を書くときの文章の書き方とビジネス文の書き方の違いなのでしょう。まずは成果をあげること、実質的な内容があることが前提です。データ・情報を構成の前提にしていきます。この点に留意すれば、渋谷の示す内容は参考になるはずです。

参照: 「ビジネス文の基本原則・基本構造:逆ピラミッド構造」

 

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