■情報化時代の組織構造の原則:ドラッカー『新しい現実』を参考に

 

1 見直される標準化による生産方式

アルビン・トフラーの『第三の波』が出たのは1980年でした。第一の波というのは農業革命、第二の波が産業革命であり、第三の波の情報革命がやってきて、脱産業社会になるという予測をしていました。現実があとから追いつき追い越していく形になりました。

いまや情報革命というのは当然のことになっています。トフラーの主張は情報産業が生まれて巨大な産業になるということ以上に、全産業が第三の波に飲み込まれて変質していくということを強調するものでした。第二の波の時代の常識が否定されていきます。

たとえば工業化社会で前提とされた標準化による大量生産方式などは見直されることになります。同じ規格のものを大量に生産しても、もはや消費者が満足しません。新たな付加価値をつけていかないと生き残れないということになります。現在進行形の問題です。

 

2 適切な組織が必要不可欠

1983年に出た『大変動』では、第三の波にかかわる産業が<うまくいかないのは、製品のデザインが悪かったり、マーケティングや企業の機構内の組織が適切を欠くときです。労働者の汗のかき方が足りないときではない>と言い、その事例をあげています。

東京でソニーの共同創業者である盛田昭夫氏と話したことがあるが、彼の話は実に明快でした。「工場労働者には、午前7時きっかりに出勤して働けと命令することができる。だが研究者や技術者に、午前7時に来て独創的な仕事をせよとは言えないですよ」というのだった。

こうした働き方の変化は、ドラッカーのいう知識労働への移行に伴う労働形態の変化ということと同じでしょう。組織側が、こういう内容の仕事をするようにと要求できなくなってきました。研究者や技術者が能力を発揮する環境を整えるしかないということです。

 

3 組織構造の原則

情報革命が起きて産業構造が大きく変わり、労働の内容が知識中心になってきたとき、組織はどうあるべきでしょうか。こういうとき、その指針となりそうなのがドラッカーの『新しい現実』14章にある「情報化組織」です。この本は1989年に出版されています。

<今から二〇年後には、大企業や政府機関など、今日の典型的な大組織では、経営管理者の階層は半分以下に、経営管理者の数は三分の一以下になる>というのがこの章の書き出しです。すでに2009年をすぎました。なぜこうした変化が起こるのでしょうか。

<知識は、その本質からして、つねに専門分化している>ため、<情報化組織では、われわれの馴れ親しんでいる命令型の組織に比べ、極めて多くの専門家が必要>です。<調整にたずさわるだけの実務上の責任を持たない人間は、大幅に不要となる>のです。

その結果、組織構造はフラットになります。<知識は、自己管理しつつ、それぞれの仕事に取り組んでいる専門家たちの頭の中にある>のです。<トップと現場の中間にいるスタッフ部門>が特別な役割をもたなくなります。これが組織構造の原則になりそうです。

 

第三の波 (中公文庫 M 178-3)

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