■感性の重視:ポスト・デジタル世代
1 今年の就職における異変
6月解禁となった就職活動も、もう終盤といってよいのでしょう。今年の就職は想定していた以上に、売り手市場になりました。その中で、ある種の異変を感じています。かつて高学歴の人しか採らないといわれていた会社が、専門学校生の採用に動き出しています。
昨年、大学のキャリアセンターの方と就職のお話をしました。会社名がいくつか出されて、あそこはいい会社だと聞いています、でも、うちの大学ではなかなか入れません…といったお話がありました。そうした企業に、今年、専門学校から採用されています。
うちの大学では…とおっしゃったのは、皆さんご存知の著名な大学です。いい雰囲気の学生がいて、偏差値も低くありません。そうなると専門学校では無理かな…と思ったりしていました。しかし、結果を見ると、強い会社が違う動きをして来ました。
2 感性のよい人の条件
いくらAIが進歩しても、人間が行わなくてはならない仕事があります。そのとき感性が重視されるに違いありません。接客やチームでの仕事の場合、その人のもつ雰囲気は大きな影響を与えることでしょう。一部の採用担当者は、そこを見ていると感じました。
先日、専門講師の指導のもと、2時間におよぶイベントを学生が企画し、招待者に披露しました。そのとき司会を務めた学生は、筆記試験では真ん中くらいの成績だったように思います。ところが最初の一言から、これはただならぬレベルだと思わせました。
いままでプロの司会者のイベントに何度か参加していますが、この学生の司会の方が、ずっと自然です。勝負にならない圧勝だと思いました。この学生を選んだのは誰だったのでしょうか。やはり学生達でした。感性のよい人は、感性のよい人を知っています。
3 手ごわい世代の登場
いまやパソコンは、学校の授業で使ったり、学校の貸出制度を利用して使うものになりつつあります。画像処理までスマートフォンで、片手間のように軽々とこなしてしまう学生が続出しています。前の世代がPC入力していたものも、手書きに代わりつつあります。
試験前にノートのコピーが回ることもなくなりました。少し前なら、ノートが手書きだと価値が下がるような雰囲気もあったかもしれません。今では友人の手書きのノートを、スマートフォンで撮影させてもらって、画面を見ながら手で写しています。
デザインを意識した製品に囲まれて育ってきた世代が、感性に従うとき、手を使うのかもしれません。手ごわい世代が出てきた感じがします。企業側は今後、製品の操作性を最重視せざるを得なくなるでしょう。それが製品の価値を高めることになると思います。
何かが変わってきています。若者たちが勝手に先行している感じがします。センスのよい人を素直に認め、その人を褒め、かつてのような嫉妬や意地悪な対応がほとんど見られません。豊かになった後の日本で生まれた新しい人種でしょう。大きな可能性を感じます。