■使える「デカルト=谷沢の方法」:書簡集から学んだ谷沢永一

1 何をどう学ぶべきか

デカルト書簡集を読み解いた谷沢永一の文章について、よくわからないというコメントがありました。哲学の話は、ビジネスと関係ないように見えます。しかし、谷沢永一が「書簡集」をもとに見出した「デカルト=谷沢の方法」は、ビジネスに限らず広く使えます。

デカルトの哲学は難解です。彼は、あらゆる人間は生まれつき同じ判断力を授けられている…という考えを、公理のように基礎にすえました。この考えをもとにデカルトは、自分の哲学を構築しています。ところが、この基礎がわれわれの感覚とずれています。

さらにデカルトは、迫害の恐れから書きたいことを思ったように記述できませんでした。この点を、林達夫が「デカルトのポリティーク」で指摘しています。こういう場合に「何を、どうやって学んだらよいのか」、その答えが「デカルト=谷沢の方法」でした。

 

2 成果物よりも発想法を探る

谷沢は、人工的な構築物であるデカルトの哲学書、たとえば『方法序説』を読んで、<現代人である我々が大きな衝撃を受けるということは、あり得ない>と判断しました。そこで哲学の内容を追求する代わりに、デカルトの発想法を探る手法をとります。

成果物そのものでなく、その発想法を探る手法は、そのままビジネスでも使えます。すばらしい製品やサービス、ビジネスモデルがあったなら、それを分析して真似しようとする以上に、飛びぬけたものを作り出す発想がどういうものかを探る方が有益でしょう。

そのときの発想の探り方が重要です。谷沢は書簡の中でも、ほとんどの人が注目しなかった、<彼の行き方を断片的に述べた部分>に注目します。ここにこそ、デカルトの本音に近いものがあるはずです。そこから谷沢は、重要な方法を見出しています。

 

3 自分自身の判断を先行させる

谷沢が見出したデカルトの主な方法は、(1)自分自身の判断力を形成し、(2)自分の考えをまとめる方法でした。これが大事なのは、<他人の意見を検討しようという場合、自分自身の判断>を他人に先行して持っていなくてはならない…と考えるからです。

自分自身の判断・考えを持つために、まず判断力の基礎訓練が必要です。具体的には、言葉の一語一語をチェックしていき、一番の本質である<最後の本体を探り出す>こと、つまり、足が地についている部分がどこであるかを見出す訓練が必要になります。

言葉から論述されるものの本質が見出せるようになったら、自分の判断や考えも検証できるはずです。<論述される骨格は箇条書きで整理することの出来るもの>ならば、おかしなところはたちどころにわかるはずです。それに堪える論述が本物です。

 

4 学んだ項目の一覧

デカルト書簡集から谷沢が学んだ文章(「『デカルト書簡集』 死を恐れず生命を愛する意志」)は、私たちに学び方を教えてくれます。「デカルト=谷沢の方法」のなかでも、とくに学んだことを、箇条書きにしてみました。影響の大きさを改めて感じます。

①成果物から学ぶ以上に、その成果物を生んだ発想法を探ること。
②発想を探るには、本質的な部分を含む断片から全体を構想する必要があること。
③言葉を一語一語丁寧に見ていくと、本質的な部分がどこにあるかが見えてくること。

④読書人のわかる用語を使い、専門用語をできる限り排除すること。
⑤論述する場合、結論とそれを導く理由づけを中心にすること。
⑥論述の骨格は、箇条書きできるシンプルな要素と構造にすべきであること。
⑦他人の意見を検討する場合、それに先行した自分自身の判断が必要であること。

⇒[デカルトの思考法

 

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