■文書作成の基礎練習:1分間スピーチの利用

 

1 1分間で話せる量

文書作成講座を秋に行うことになりました。今回はややベーシックなところからお話をしていく講座になりそうです。演習をいくつか取り入れる予定でいます。たとえば基礎的な演習として有効なのは、1分間スピーチをしてもらうことです。

事前に3つの質問を用意して、これに答える形でお話をしてもらいます。そのとき、内容をあまり気にしないでください、そのかわりスラスラ話してください…という条件をつけます。スラスラ話をするとだいたい300字から400字弱の分量になります。

何秒であるかをチェックします。質問の答えを一気に話して30秒弱で終わったり、1分を超えてもまとまらなかったりします。1分間スピーチのよいのは、1分間目一杯しゃべるとどのくらいの内容になるのかを、自分と他人の話を通じて把握できるためです。

 

2 A4一枚に書ける内容

1分間でしゃべれる量は限られています。そのなかに印象的な一言が入れられたら、そのスピーチは成功したといえます。各スピーチのあとに、これはよいフレーズだとか、もうちょっと工夫したらよいフレーズになるといったコメントをつけるのは、そのためです。

10名程度のスピーチを聞くと、皆さん何となく、1分間で語れる内容がどのくらいであるのかが把握できるようになります。A4一枚に1500文字を入れようとしたら、4分か5分の内容であると何となくわかります。こうした感覚があると文書の作成も楽です。

1分間で話せる内容が文書の最小単位ともいえます。盛り込める内容は3つの質問への答えがせいぜいです。5分になったら、質問が単純に増えるというのではありません。掘り下げが必要です。その結果、入れ込む材料の並べ方を工夫することになります。

 

3 自分で問題提起を見出す

こうした1分間スピーチを利用した文書作成は、いわば補助輪つきの段階です。1分間スピーチには、はじめに内容を何にするかの設定があります。次の段階では、自分で質問を考えなくてはなりません。これが問題提起です。問題提起が文書の価値を決めます。

問題提起を考えるには、この文書で何を書かなくてはいけないのかという目的を明確にする必要がでてきます。じつは意外に難しいのが、目的をどうとらえるかという視点です。繰り返し言われていることですが、なかなか実施されていません。

ドラッカーが3人の石工の話をしています。一人目は「これで暮らしを立てている」、二人目は「立派な建物を建てている」、三人目は「人々が祈りを捧げる大寺院を作っている」…でした。意識して練習しないと、一人目の視点になりがちです。