■法律家 西原春夫の文章作法:ビジネス文書作成の参考に 1/2
1 論理的であるべき理由
ビジネス文書の文章は、簡潔で的確をよしとします。論理的であることが、ビジネス文書の基礎になります。グローバル化が進んだ時代には、いままで以上に論理性が重視されることでしょう。このとき参考になるのが、法律家の文章の書き方と文書の作成法です。
先に川島武宜の文章についての発言を取り上げました[文章の基準]。一番重視されるのが論理的であることでした。『短文・小論文の書き方』での西原春夫も、<法律家の文章は論理的でなければならない>と書いています。なぜでしょうか。
西原は言います。<論理法則にしたがった理性的な思考に合致するのでなければならない。なぜなら、法律家の文章は、できるだけ解釈の余地が少ないものでなければ、そのこと自体がふたたびあとで紛争の種になりかねないからである>。
2 論文の基礎となる3つの条件
論理的な文章を書くためには、それに先立って項目の立て方が問題になります。<論文の骨格を、ちょうど目次のように大項目、中項目、小項目などの組み合わせであらわすことができれば、まだ書き出していなくても、作業の半分はすんだといってよい>のです。
このとき3つの条件が示されています。<きちんとした設計図が出来上がり、書き出しの言葉が決まり、それぞれの項目をこなす知識があれば>、あとは<文章の書き方に注意しさえすれば論文は完成するはずです>。示唆に富む考えです。
3つの内容は、(1) 設計図を作ること、(2) 主役になるキーワードを決めること、(3) 項目にふさわしい材料を用意すること…と言ってよいかもしれません。ここでの前提は、法律の文章もビジネスの文章も、何を書くかが決まってから書くものだという点です。
3 3つの条件へのヒント
西原が言う設計図とは、論文の骨格をなすものであり、大項目、中項目、小項目などからなる構造です。これを<下書きし、どの項目にどのぐらいのエネルギーを注ぐかを慎重に見定めてから書き始めるのがよい>とのこと。
では、どう書き出したらよいでしょうか。書き出しをどうするのがよいか…の決まりはありません。項目にふさわしいキーワードを主役にすえると、書き出しが容易になります。項目の主役になるキーワードが決まったら、それを中心に記述を進めて行きます。
書く材料の用意ができることも重要です。<知識そのものの発達とその表現技術の発達とは、形影相伴うものである>からです。<知識を得るためには話を聞くだけではなく、本を読まねば>…というのは学生向けの本ですから当然かもしれません。(つづく)