■シンプルの概念:ブライダル業界を垣間見て
1 おもてなし婚という概念
少し前に必要があってブライダル業界のことを調べました。ここ数年、大手でも意外に苦戦しています。求められるサービスが変わっているのです。日経新聞(2015/1/16)の記事に「派手婚→地味婚→無し婚→おもてなし婚」という流れだと書かれていました。
どうやら東京オリンピックの招致の時に使われた「おもてなし」というキーワードを流用したお話のようです。しかし、まだトレンドになっていないようです。少数派にそういう人がいるというだけでしょう。おもてなし婚という概念も不明確なままです。
この記事の最後の文は、<結婚式が新郎新婦のハレ舞台だった時代から、招待客への感謝の気持ちを伝える時代に変わってくれば、披露宴に列席して良かったと、思う機会も増えるのではないだろうか>となっています。単純化されすぎていて不正確です。
2 多様性に対応する
求められるサービスが変わってきているのは、別にブライダル業界に限らないことです。今後も、ビジネスが変化し続けることは確実です。そのとき対応する側に、何が求められているのか、その本質が何であるのか、再認識しておくべきでしょう。
ブライダル業界も他の業界と同じです。多様性に対応する必要があるということです。招待客への感謝を伝えるのもよいでしょう。しかし若い二人の披露宴なら、感謝されるよりも、周りが盛り上げて祝福してあげたいというのが人情の自然だろうと思います。
当事者や親族がどうしたいのか、十分に聞き取るスキルが重要になってきています。聞き取るだけでなくて、その希望を具体化する提案が出来るかどうかが決め手になるのでしょう。プランナーをはじめとしたスタッフの技が問われることは間違いありません。
3 シンプルが求められている
では派手でもなく地味でもないなら、どういうコンセプトが求められるのでしょうか。どうやら流れが決まってきているようなのです。無駄なく洗練されていること、あえてキーワードでいうならシンプルということのようです。派手も地味も行き過ぎなのです。
シンプルという概念を、奥山清行は『伝統の逆襲』で定義しています。<一つは、何かコアとなる価値があって、それを凝縮したもの――削ぎ落としていってコアとなる価値を残した「もの」や「こと」である>。これだけでないことが重要です。
もう一つが、<たくさんの要素がありながらも、それらを統合し、リファインして、洗練されたものになってくると、結果としてシンプルに見える、というもの>。シンプルな高級路線です。プランナーが質のよい各部分を統合して結晶化できるかが問われます。
ブライダル業界のこれからの努力を想像しながら、確信したことがありました。多様性に応える時代になると、どうしても個人の努力、能力に依存する領域が増えてくるということです。これは別の業界でも同様だろうと思います。