■目標管理の方法:マネジメントとドキュメンテーション

 

1 自己目標管理がマネジメントの中核

ドラッカーは『マネジメント』で、<仕事が組織全体の目標に向けられなければ、成果は得られない>と書いています。目標の達成が大切なのは、言うまでもありません。特に大切なのは、自分の活動を目標に照らして自己管理することにあると主張しています。

ドラッカーは、<自己目標管理こそマネジメントの哲学たるべきものである>と言います。ドラッカーは「目標」とだけ書いていますが、ここで、目標という言葉には、二つの概念がある点に注意しておきたいと思います。

プロジェクトを考えれば、明らかなことです。最終的な「ゴールとしての目標」と、そこにいたるまでの、そのときどきの目標、「マイルストーンとしての目標」の二つがあります。この二つの目標を管理することがマネジメントでは重要です。

 

2 サイバネティックスの方法

この目標管理をする際の原理となったのが、ウィナーが唱えたサイバネティックスの考え方です。ウィナーが『人間機械論』を書いたのは1950年でした。ドラッカーの『現代の経営』に先立って、その原理が提示されています。

唐津一は『経営と情報』で、目標をきめて問題を解決する手法として、かつて精密科学的なやり方が主流だったとしています。これは、出来るだけ細かくモノを調べて、あらゆる条件をすべて分析し解明して、計画を立ててやっていこうとする方法です。

一方、サイバネティックスの方法とは、例えば、竹芝桟橋から大島に行くとき、大島方向に向けて船を出し、しばらくすると灯台か何かを目標にして舵を取り、その先に行くと、また目標を見て舵を取り直す。こうして、大体決まった時間に到着するという方法です。

 

3 目標に求められる三つの条件

変化の激しいビジネスでは、目標管理の方法としてサイバネティックスの方法が採用されました。そのときどきの目標となるマイルストーンを基準に、目標管理を行っていく方法です。目標を基準にして、管理のためにフィードバックの環を回していきます。

行動を起こし、その結果を測定し、目標とのズレを比較する。ズレを修正して行動し、その修正結果を測定し、また目標とのズレを比較する。このようにフィードバックの環を回していくことになります。こうした目標管理を行うために目標の形式も規定されます。

目標は、(1)明確で客観的な基準であること、(2)行動に結びつけて考えられる形式であること、(3)行動が測定できる形式であること…が必要条件です。こうした目標に基づいて管理を行い、最終目標となるゴールへ到達できるようにしようとするのです。

 

4 フィードバックの環を回すのは文書

フィードバックの環を回っているのは情報です。たんなるデータでは目標管理になりません。測定結果を目標と比較する必要があります。また測定項目をすべて定量化するのは、現実的ではありません。客観化の工夫が必要です。

ビジネスでは、情報を回す仕組みが重要です。情報は一般に文書の形式をとります。したがって、文書作成の仕組み、ドキュメンテーションの方法が重要になるのです。ビジネスに求められるスピードと成果を上げるために、その方法・仕組みを再検討すべきです。

A4一枚の報告書を求めるのも、ビジネスのスピードを上げることが目的でしょう。情報を入れる容器=ユニットを決めることは重要です。そのことで処理が早まります。同時に記述の形式を考える必要があります。こちらがより重要になっています。