■全体像を把握する方法:業務フローの必要性
1 業務の輪郭を描く業務フロー
業務マニュアルを作るとき、どこから手をつけていったらよいのか、問題になります。業務の全体像が見えていないと、マニュアルを作る範囲さえ決めかねます。業務の全体像をどうやって把握したらよいのか、その方法が問題となります。
まず業務の概要を書く必要があります。業務フローから書くのが普通です。このとき、業務の概念をどう捉えるかによって、フローが全然違ってきます。業務を作業手順にそって記述したフローにするならば、詳細な長大な業務フローが書かれることになります。
全体像を把握する場合、細かい作業手順まで記述したフローをつくる必要はありません。逆に全体像を把握するのに役立ちませんから、フローを作る目的に反します。業務の輪郭が見えるようにするためには、業務をいかに大きく捉えるかが問題になります。
2 業務のデッサンに当たる業務フロー
私は毎週、油絵教室で石膏デッサンを描いています。デッサンを描くとき、最初になすべきことは、全体のかたちを描いていくことです。いかに大きく見ることが出来るかがポイントになります。石膏の細かい形を、最初から描きこむことは、ダメなデッサンです。
いかに最初におおきな立体を捉えるかが問題です。立体を構成する大きな面がどこにどういう風にあるのか、それが見えるようにならないと、よいデッサンになりません。実際は逆なのです。デッサンを描く目的は、大きく捉える目を獲得することにあります。
業務マニュアルを作る場合にも、業務のデッサンにあたる業務フロー作りが必須になります。業務形態の全体像をどうフローに書いたらよいのか、なかなかわからずに苦労します。しかし、その苦労そのものが業務を大きく捉える視点の養成になるはずです。
3 シンプルに記述することがポイント
業務マニュアルを作った経験がある人でも、業務フローを書いたことがない人はいます。しかし業務の全体像を把握するためには、業務フローを書く経験が欠かせません。業務フローが書けなくては、大きな業務の流れを捉えることが難しいはずです。
いかにシンプルに業務の流れを記述するかが、業務フロー作りのポイントです。ステップとステップの間に漏れがないように確認しながら、業務のバトンタッチの様子を示していきます。その結果、大きな業務の流れが見えてきたら目的達成になります。
業務を「~する」という形式で示すとき、この「~する」にあたる概念は個々の作業ではなく、その上位概念を示す形式で記述することになります。「クレーム受理」とあったら、受理の手順という作業形式よりも、どこの部門で受理するのかが大切です。
全部門でクレームを受理する場合、受理のあと登録という過程を経てから、分析チームに報告するのが普通です。「クレーム受理」から「クレーム分析」の過程に、いきなり移行しないはずです。こうしたことは、実際にフローを書いてみると、見えてくるものです。