■電子化文書の作法2/4:タブレット端末をめぐって
1 タブレット端末の可能性
多くの電子化文書は、ディスプレー上で読まれます。縦置き画面で読まれるのが普通です。縦置き画面は、眺める要素が入り込み、紙に比べて、深い読み取りは期待できなくなります。したがって、その対策を考える必要があります。(前回分:「電子化文書の作法1:基礎編」)
もしかしたら一つの解決策になるかもしれないと期待されるのが、タブレット端末です。ご存知のように、タブレットは横置きで読まれます。今までのディスプレーとは、この点で根本的に違っています。
現在、タブレット端末で文書を読むときに、PCのディスプレーで読むときと変わらないところと、違いのあるところに分かれてきたように思います。例えば、業務マニュアルをタブレット端末で読む場合、持ち歩きできますから、この点、便利です。
しかし現時点で、業務マニュアルの使われ方を見ると、利用率に大きな違いはありません。利用しやすさの点で、PCのディスプレーで利用するほうが、やや有利なようです。画面が大きくて、操作に慣れていることから、便利に感じるのかもしれません。
では、タブレット端末は、あだ花になってしまうのでしょうか。持ち運び以外に、タブレット端末で読む強みはあるのでしょうか。可能性を感じさせる事例について、少し考えてみたいと思います。どうやら文書の作りかたのほうに問題があるようなのです。
2 電子化された新聞紙面
現在、新聞紙面をPDF化した電子版が読めるようになっています。電子版を読む場合、PCよりもタブレット端末のほうが、読みやすいとお感じになるはずです。横置きでタッチパネルが使える強みが出てきています。
ここで大切なことは、Web上の見出しが並んだ記事よりも、PDF化した紙面のほうが読みやすいということです。Web上の記事は階層が作られ、目的の記事を読むのに、何度もクリックする必要があります。
紙面をPDF化したものは、一面ごとに領域が決まっています。該当のページを表示するだけで、特別複雑な操作をしなくても、必要な情報にアクセスできます。シンプルな構成でないと、電子化文書は読みにくくなります。
たしかに小さな画面に1ページ全体を表示するのは無理があります。しかし、見出しは見えます。狭い領域の中に、全体の構造が見えるのです。必要な記事は見つけられるでしょう。文字の大きさの使い分けで、全体と部分の関係がつかみやすくなったのです。
全体像を見て、必要なところに移動して、文字を拡大すれば、必要な記事が読めます。本来、クリックもスクロールもしないほうがよいのですが、どちらかを選ぶ場合、クリックよりも、スクロールのほうが使いやすいということになります。
3 全体から部分への流れ
こうした新聞のケースは、今後の電子化文書の方向を示唆しているといえます。全体像を示し、部分にアクセスする形式が利用しやすいということです。検索をかけなくても、必要項目がどこにあるのか、ある程度推定できる形式が必要だということです。
それでは、紙の業務マニュアルを電子化して、タブレット端末で使うようになったとたんに、利用されなくなった事例は、どう考えたらよいでしょうか。この場合、何が一番の問題なのでしょうか。もうお分かりだろうと思います。
使われない最大の理由は、必要な項目へのアクセスに手間取るためです。検索キーワードを入れ、クリックすることは、人に負荷をかけます。二度、三度の検索が必要になると、利用の意欲が減退します。
紙のように、だいたいの見当をつけて、いきなりページを繰るのと違って、手間なことです。紙のマニュアルでは検索できなくても、使い込むうちに、いきなりアクセスできるようになりますから、ある時点から、紙が有利になります。
紙の文書の場合、文書の不備を利用の工夫でカバーできました。電子化された文書では、操作が決まっていますから、工夫に限りがあります。文書の作りかたを工夫する必要があります。ではどうしたらよいのでしょうか。(この項、続きます。⇒「電子化文書の作法3:独り立ちした文章」)