■意識的な能力の獲得が必要な時代:便利さに伴うリスク

      

1 スマートフォンでメモをする人

スマートフォンが普及したころ、使いすぎると、能力が低下するという話がありました。主に若者に対しての警告だった気がします。しかし大きな画面に慣れていたため、スマホの小さな画面で何時間も何をするのだろうとも思いましたが、現実は違いました。

若者の中に、スマホでメモを取る人がいるのはご存知でしょう。驚くほど器用に入力しています。しかし、たいていの場合、手書きのメモのほうが早いでしょう。メモの場合、繰りかえしていると、メモが上手にとれるようになります。能力を獲得するのです。

多くの人がメモを取っていました。いまは、ほとんどの人がメモを取りません。本来、習得できることが、できなくなってしまいます。メモがあれば、講演の主要なところは再現できるはずです。日本語の場合、変換いらずの手書きは、タイピングよりも有利です。

     

2 仕事に影響する読み書きの水準

先日、メモの効用について書きました。メモを取ってそれを再現するのに、1時間の講演なら、1時間足らずでタイプすることができます。良い講演なら、内容を確認する価値があるはずです。メモをもとに自分用の講演録づくりを試してみると、練習になります。

スマートフォンが一般化した後も、若者たちに手書きのメモを勧めてきました。しかし、なかなか定着しません。相手にゆっくり話してもらえば、そのまま入力できて、一発処理になります。そのほうが便利かもしれません。そのために能力獲得の機会が奪われます。

通常のスピードで話す内容を、聞きながらメモして、それに基づいて話の主要部分が再現できるということなら、能力獲得と言ってよいでしょう。しかし、この程度なら特別なことではなかったはずです。読み書きは基礎ですから、その水準が仕事に影響します。

    

3 能力を獲得する訓練が必要

生成AIは急速な技術進歩とともに、非常に便利になってきました。録音データがあれば、講演録ならすぐに作ってくれるでしょう。慣れない人が作る講演録よりも、良いものになるはずです。メモを取って再現するなどという方法は、すたれていくことになります。

生成AIの場合、仕事で使います。無料版でも、それなりの性能ですから、たぶん使い始めると、どんどん使うことになるでしょう。能力が低下するという警告はありますし、多くの人が能力を低下させるのだろうと、当然のように思っています。かなり危険です。

生成AIを、人間の能力アップに利用する方法を考えていく必要があります。あるいは別の訓練が必要でしょう。少しくらいの効率化よりも、人間の能力が低下するほうが心配です。移動が楽になって、運動不足になってきたら、あえて運動をする人が出てきました。

一部の若者たちが、気づき始めています。生成AIの利用は今後も拡大していくでしょう。だからこそ、基礎学力を再確認し、能力を身につける訓練が必要だと、そうした意識を持った人たちが出てきています。メモする人の数が、ある種の指標になるかもしれません。