■リーダーの養成について:ドラッカー『非営利組織の経営』から

      

1 珠玉の断片が見つかる『非営利組織の経営』

『非営利組織の経営』は今後、今以上にドラッカーの著作の中でも大切に扱われる本になるだろうと思います。自分を向上させるためにどうしたらよいのかを考える際の、基本書になるはずです。非営利組織を経営することと、自己開発には親和性があります。

この1990年の著作の中に、いくつものエッセンスがあるのに気づくはずです。9人との対話も収録されています。80代に入って、ドラッカーはますます体系的でなくなっていました。その代わりに、珠玉の断片とも言うべき、輝きのある言葉が見つかることでしょう。

たとえば、リーダーの養成について。バーテルとの対話で、[キリストは十二人の使徒しか選ばれなかったことを思い起こすべきです](p.210:1991年版)と言い、[十二人に対してでさえ、大変な手間をかけている]と語っています(p.211)。

     

2 上位1割に焦点を当てること

リーダーが何人必要だから、それを養成したいというのは、簡単にいかないのです。しかし、ドラッカーは、[専門学校の運営を手伝った]際に、[学生の水準の高い、上級の大きなクラスに放り込んで教えさせなければならなかった]ことがありました(p.209)。

[新米の先生]に対して、ドラッカーは[上から10パーセントの生徒をつかまえることだ。彼らが離れていけば、他の学生も離れてしまう。上から10パーセントがやる気を起こして勉強すれば、平均的な学生もついてくる]と教えています(p.209)。

これは日本の学校などでは、なかなか実行されていません。上位1割に焦点を当てると、脱落者が出てきます。その人たちは声の大きな人です。しかしドラッカーは、[もっと下の方の学生については、神に祈るしかありません](p.209)という言い方をしています。

    

3 リーダーが生まれる実際的な水準

強い会社のオーナーが、最初から適性のある人を選ばなかったら、教育にならないと強調していました。何十倍もの応募者がいる会社ですから、結果として上位1割どころの話ではありません。実際のところ、適性を見出すための選抜方法が問題になっていました。

社会での現実を見れば、組織の上位1割の人たちがリーダーにふさわしいとは言えないでしょう。「上から10パーセントの生徒をつかまえる」というのは、実際に講義を実施することを考える場合、かなり実際的な水準を示しているのではないかと思います。

リーダー養成講座を受ければ、全員がリーダーになれます…などとは、とても言えません。そのつもりで取り組む人でない限り、講座も研修も、うまく作用することなどないのです。私たちは、[リーダー的な人を動機づけることはできると知っています](p.209)。

教える側と教わる側が、ピタッと行くことは、そんなに当り前のことではありません。一期一会といった気持ちになることがあります。『非営利組織の経営』は、ドラッカーの本音がかなり出ている本です。ここから重要なヒントを掘り起こせるかもしれません。