■「戦略とは選択である」をめぐって:戦略概念の整理
1 「イシューは何か?」
かつてP&Gの部長だった高田誠は、『P&G式 伝える技術 徹底する力』で、「イシューは何?」と職場で問われてきたと書いていました。イシュー(Issue)とは、「論点・課題・問題点」のことです(p.54)。焦点を絞るための、キーポイントになります。
このイシューというのは、マネジメントの体系の中で、どういう位置づけになるのでしょうか。このあたりについて、高田の本では言及されていません。どの場面で、キーポイントは何かが問われるのでしょうか。具体的な事例から考えてみたいと思います。
堺屋太一は『夢を実現する力』で、佐藤栄作首相から沖縄返還に際して、人口を減らさないようにと言われました。それは沖縄で人々が暮らし、子供が増えていき、人口が減らない状況が定着するということになります。それには産業を起こさなくてはなりません。
2 ビジョンが見えること
堺屋は、沖縄の人口を減らさないという目的を達成するには、住民が安心して子育てしていける環境が必要だというビジョンが見えていました。沖縄の産業復興は簡単ではないでしょう。だから「沖縄にどんな産業を興したらよいか」ということがポイントです。
製造業は不利に働きます。観光しかなさそうです。それで堺屋は、「海洋リゾート沖縄」というコンセプトを生み出します。沖縄海洋博によって、インフラ整備が進み、観光客が増えてきました。産業として成立するには、10年後10倍の観光客が目標となります。
目的を達成するには、どんなビジョンが見えてくるのか、そのときキーポイントになる「論点・課題・問題点」=イシューは何でしょうか。それを解決するためのコンセプトは何であり、それをどういうストーリーで実現したらよいのかを決める必要があります。
3 中心課題を選択すること
P&GのCEOだったA・G・ラフリーの『P&G式「勝つために戦う」戦略』第1章のタイトルは「戦略とは選択である」でした。達成すべきイメージがビジョンであり、キーポイントを絞り込むことがイシューということになります。戦略の概要が見えるようです。
ここに、シュンペーターの考えを勘案すると、きれいに整理できます。シュンペーターは、ビジョンという洞察と、それを理論化するためのツールが必要だと言いました。そうなると、戦略とは「ビジョン⇒イシュー⇒ツール(コンセプト+ストーリー)」となります。
どんな状態であるかのイメージ、沖縄の例なら、安心して子育てする環境のイメージがビジョンです。そうなると沖縄にどんな産業を興すのかがイシューになります。海洋リゾートで行こうというのがコンセプト、沖縄海洋博以降の政策がストーリーということです。
「戦略」というとき、ツールに注目が行きますが、何がポイントなのかという「イシュー」が問われます。このプロセスで、取り組むべき中心課題が「選択」されるということです。この理解で問題ないのかどうか、もうしばらく考えてみたいと思っています。
