■「祖述」という方法:天才型とは違う独自性・創造性へのアプローチ
1 生成AIと人間の役割分担
9月1日に実施する図解講座のテキストを提出したところです。タイプミスなどのチェックは、もはや生成AIに任せたほうが楽ですし、正確になってきました。だんだん人間がきっちりやるべきところと、AIに任せたほうが良いところの役割分担が見えてきそうです。
思考は言葉でできています。ビジネスの図の場合も、イメージではなくて、これがポイントですと示す図表でないと効果的に伝わりません。訓練が必要です。先日の文章講座にも、若くて意欲的な方々が参加してくれました。訓練をするなら、若さは有利に働きます。
生成AIは、様々な標準を認識して、統計的にも確率的にも妥当なものを見出すことが得意です。ミスのチェックなどに力を発揮します。しかし、現状からの発展をしようとする場合、従来からの蓄積したデータを標準化しただけでは、十分な成果は上がりません。
2 孔子が心がけてきた「祖述」
生成AIを使うほどに、秀才型の学習スタイルだという印象を持つようになります。技術者に聞いてみても、機械だからそうなるのは当然だということでした。発展型の発想は、人間がやればよいのです。しかし簡単ではありません。天才など、そうはいませんから。
とはいえ一歩踏み出すとしたら、独自の視点で、創造力を発揮するというアプローチが必要になります。従来からの発想では、そうしたアプローチはとれません。「矩を踰える」必要があります。しかしそのとき、どんな方法をとるべきかが問題になるでしょう。
孔子が「心の欲する所に従って矩を踰えず」と言うとき、宮崎市定の解釈のように「努めずして度を過ごすことがなくなった」ことから、年齢の衰えを感じたはずです。元気な時の孔子は「述べて作らず」を旨として、創作でなく「祖述」を心がけてきた人でした。
3 伊藤仁斎のいう「祖述」の概念
生成AIの時代に、独自性・創造性を発揮することは可能なはずです。「祖述」という方法があります。ここにいう「祖述」については、中村幸彦が「伊藤仁斎の思想」(著述集11巻)で語っていました。開祖した人を超えることによって、祖述できるという考えです。
尭舜を祖述した孔子が、尭舜より大きな影響を後々に与えたように、従来の説を発展させることが祖述です。実際、仁斎の「仁」の説などは、孔孟の道から逸脱しているとも言われています。しかしそれは「伝統の中に不変の良さを見出す」(宮崎市定訳)ことです。
従来の見解を発展させることは、根底からすべてを変更することではなくて、「故きを温ねて新しきを知る」ことになります。結果として、発展して新しい見解となることで、独自性・創造性が獲得できるのです。この場合、正統派の勉強が基礎になります。
池谷裕二『できない脳ほど自信過剰』の「斬新すぎるアイデアは理解されない」でも、[科学論文は全般的に保守的で][後世への影響が強い論文は、単に革新性が高かっただけでなく、保守性もまた強かった](p.25)とありました。「祖述」は王道の方法です。
