■概念の明確さとマネジメントの用語:「ミッション・使命」の場合

     

1 「顧客」ではなく「使命」がかじ取り役?

ミッションという用語がマネジメントの本に使われることがありますが、どうも、簡単に定義ができる言葉ではないように思います。日本語では使命です。ほぼ、ブレがないくらい訳語は一体化しています。ミッションも、使命も同じ意味と言ってよいでしょう。

マグレッタ『なぜマネジメントなのか』では、使命という言葉を、重要な場面で使っています。非営利組織において、[ここでは、「顧客」ではなく「使命」がかじ取り役なのである。「顧客」は、使命を帯びた組織を迷走させる可能性がある](p.70)とのこと。

ここにいう「使命」とは、どんな意味なのでしょうか。[存在意義となる価値とは何か、つまり、彼らの使命とは何か](p.70)とあります。どうやら「使命」とは、「存在意義となる価値」ということになります。これは目的の領域に入る概念というべきです。

      

2 目的と目標とミッション

ミッションとか使命というのは、一般的な用語としては、与えられた重要な任務というほどの意味になります。目標達成の任務を担う場合、ミッションや使命は目標の領域に入る概念になります。与えられたものが、目的なのか目標なのかで意味合いが変わるのです。

目的の概念ならば、まさに存在意義となる価値が関わります。ただし目的と一致するのではなくて、目的の概念の一部というべきでしょう。目的のほうが広い意味です。存在意義を問う場合もありますが、好きだから、やりがいがあるからというのも含まれます。

目的の概念は、狭く考えるべきものではありません。そして、目的の概念を広く認識する場合、目標の概念も広く考えることになります。哲学の基本は「目的と手段」でした。そこに科学の思想が生まれてきます。「目標と手段」が哲学の領域にも入ってきました。

    

3 概念の不明確さが記述を迷走させる

戦略を考える場合にも、目的と手段、目標と手段の関係が中核になります。したがって、目的と目標の概念は、マネジメントでは、独立した概念として、重視すべきものです。両者にまたがった「ミッション、使命」という用語は、使いにくい概念と言えます。

非営利組織において、顧客が「使命を帯びた組織を迷走させる可能性」を持つと言う場合、「顧客」の定義が問題になるでしょう。非営利組織とかかわり、恩恵を受ける人たちが顧客である場合、組織は、自分たちの顧客を定義して、組織を見直す契機になります。

使命と顧客は、本来対応すべき存在です。自分たちの使命・ミッションに対して、その効果・成果がどんなものであるかを知るのに不可欠なのが、「顧客」になります。実際になされている仕事がどんなものであるかを検証するには、顧客を見るしかありません。

自分たちがなすことを、受取って享受する関係ですから、任務と成果の関係です。任務が目的にかかわるならば、成果の判断も価値観にかかわり、任務が目標にかかわるなら、成果は客観的なものになります。概念の不明確さが記述を迷走させているということです。