■ミッションという言葉のニュアンス:再定義が必要なマネジメント用語

     

1 「ミッション・使命」がもつ言葉のニュアンス

少し前に、「ガブリエルのオーボエ」という曲を知りました。とてもいい曲です。3分ほどの長さですから、Youtubeにアップされていた違う演奏家の演奏を、何度も聴きました。モリコーネという作曲家の曲で、映画の「ミッション」に使われた音楽だとのこと。

繰り返し聴くうちに、頭のなかにメロディが流れてきました。「ミッション」という映画があったのは記憶にあります。しかし見たことはありません。どんなストーリーなのか、そういうことは分からないままです。ふと「ミッション」という言葉が気になりました。

ミッションという言葉は、日本語では使命という言葉になるのだろうと思います。マネジメントの用語として、「使命」はあまり使われなくなりましたが、マネジメントにおける「ミッション・使命」という用語には、ある種のニュアンスがあるようです。

     

2 ミッションについてのコトラーの解説

コトラーはなんて言ってたろうかと、気になって『コトラーのマーケティング・コンセプト』の「ミッション」の項目を見てみました。[企業が設立されたのは、ミッション(使命)を果たすためである]とあり、そのあとに何社かの事例が示されています。

マース社のミッションは、「顧客がわれわれの上司である。品質がわれわれの務めである。価値がわれわれの目標である」です。マクドナルドのミッションは、「われわれのビジョンは、世界最高の『クイック・サービス・レストラン』になることだ」とあります。

ジョンソン・エンド・ジョンソンのミッションについて、「目標に優先順位をつけること」を特徴として挙げています。4項目が並んでおり、[株主に確 実に利益をもたらすには、この順番が最適なのである]とのことです。定義は明確になっていません。

      

3 ドラッカー『非営利組織の経営』のミッション概念

ドラッカーは『非営利組織の経営』で、最初に「使命とは何か」を論じました。救急治療室に「患者を安心させることがわれわれの使命である」という標語が掲げられている例を挙げます。(p.6:1991年訳)。さらに「使命」は、実行を伴うものだということです。

安心という使命には、[患者は誰でも必ず一分以内に、しかるべき医者の診察を受けられるということを意味する。これこそが使命であり、目標である](p.7)とあります。目的というよりも目標に近い概念であって、なすべき任務が問われるということです。

この本の最後の章は「何をもって記憶されたいか」とあります。ドラッカーは[この問いは、自らを異なる人物として、つまり、そうなりうる人物としてみるよう仕向けてくれる](p.248)というのです。個人だけでなくて、組織でも同様のことでしょう。

まずミッションに先立って、自らが存在する意味を問い、どうあるべきかを考えることが前提になります。前提に基づいて任務を明確化したものがミッション・使命ということです。これでは多義的な使い方にならざるをえません。再定義が必要だと思いました。