■新井紀子『シン読解力』を読んだ印象:不適切な問題と解説

      

1 実力養成とは無縁の読解問題

新井紀子著の『シン読解力』という本があります。昨年、話題になっていたような気がしましたが、さらって読んだだけで、忘れていました。あまり縁のない本だという気がしたのです。読解力をチェックする文章が、あまり適切でないと思ったのでした。

文章講座のテキストを作るうちに、何だか気になってきたのです。何か特別な理由があったのでしょうか。確認のために本を見てみると、思い出しました。何のことはありません、こうしたドリルをしても、読解力は上がらないと感じたということです。

読解力をテスト形式で、定量的に測定しようとするアプローチに、賛同する人はきっといることでしょう。しかしドリルを繰り返したからと言って、実力がつくとは思えません。形式に慣れてくれば、正解率が上がるかもしれませんが、それは実力ではないでしょう。

     

2 読解レベルが上がるほど間違う問題

第2章にいくつかの問題が並んでいます。「問題04」を見ると、こんな文章でした。「1990年から2010年にかけて、世界全体では毎年平均約700万haの森林が失われた。2010年現在、地球には、全陸地の31%をしめる森林がある」(p.97)。これに問題がつきます。

上記の文が正しい場合、次の文「1990年当時、地球の全陸地の70%以上が森林ではない部分だった。」が、「正しい」か「まちがっている」か、「判断できない」か、答えよというものです。正解は「まちがっている」ということでした。そんな気もします。

この問題について、新井のコメントは以下のようなものです。[高校生の正答率が、小中学生より有意に低いことが目についた問題です。教員の正答率が高校生よりさらに低い34・5%にとどまりましたが、その理由はわかりません](p.98)。わかりませんか…。

    

3 読解力がつくはずもないドリル

「森林が失われた」とありますが、新たに森林が生まれた領域はゼロだというのでしょうか。このあたりがわかりません。正解は「判断できない」でしょう。しかし同時に、この種の甘い問題を作る出題者なら、「まちがっている」を要求しがちなこともわかります。

助詞を入れる問題もナンセンスなものでした。「幕府は、将軍□1万石以上の領地を与えた武士□大名として全国に配置し、各地□支配させました。大名□与えられた領地とそれを支配する組織□藩と呼ばれます。」というものです。こんな練習は役立ちません。

各助詞の機能を理解しない限り、ドリルを繰り返して慣れたところで、意味がないのです。「水星・金星・地球と火星は地球型惑星である」と、「水星・金星・地球と火星は地球型惑星である」は、内容が「同じである」「異なる」うちから答えなさい…とあります。

助詞が違うのですから、内容が異なるのは当たり前です。困ったことに、解説が間違っています。正解率をパーセントで表されると興味深いでしょう。当たったハズレたと言って楽しむのには、よいかもしれません。しかし、これで読解力がつくはずはないのです。