■信頼関係の醸成と適切なコミュニケーション:プーチンの戦争と組織の最重要問題
1 河野克俊『統合幕僚長』新版「はじめに」
2022年2月の、ロシアのウクライナ侵略から、すでに4年を超えています。どうやら初めから、ロシア側には妙なズレがありました。河野克俊『統合幕僚長』の新版につけた「はじめに」は、2023年12月に書かれたものですが、やはり正しかったようです。
[この戦争は「プーチンの戦争」と言っても差し支えない。すなわちプーチン大統領の世界観・歴史観にもとづいてはじめられた戦争なのだ](p.7)というものでした。プーチンの考えは[ロシア、ウクライナそしてベラルーシは三位一体](p.8)だというものです。
しかし、これはロシア全体の考えとは違いました。河野は[ウクライナ侵攻後の二月二十七日、プーチン大統領は、ショイグ国防大臣とゲラシモフ参謀総長に各部隊の即応レベルを最高度に引き上げるように指示を出した]、その場面に注目しています(p.9)。
2 信頼関係及びコミュニケーションの問題
プーチンの指示の場面を見ると、[プーチン大統領が長机の最上席に座る一方、両名は長机の端に座り、プーチン大統領との距離は相当離れていた](p.9)のでした。[一般的に話が重要であればあるほど参集者の距離が近くなるものだ](pp.9-10)というのです。
▼核を即応体制に置くという最重要課題をはるか遠くから指示を出し、しかも軍の意見を聞こうともしない一方通行のこのシーンを見て、軍の最高司令官であるプーチン大統領と軍との信頼関係及びコミュニケーションに問題があると感じた。 p.10
その後、状況はロシア優位には推移していません。今年に入ってからは、ウクライナのドローンによって、ロシアは劣勢に立っています。こういう時に、プーチンと軍の関係が強化されることは考えにくいことです。どうやら、勝負は決する方向に向かっています。
3 組織の最重要問題
もし様々な要因によって、ロシアが一気に攻め込んで、ウクライナ全土を占領したら、状況は変わっていたかもしれません。しかし1年10カ月たってみれば、[プーチン大統領が当初目指したウクライナ全土の中立化、非軍事化は極めて困難になった](p.12)のです。
ウクライナが独自に動けるほどの余裕がない以上、長期戦になると予想することになります。どうやら最初の段階で、ボタンの掛け違いがあったようです。目的の共有がなされていなかったことになります。戦況が期待通りでない以上、その修正は難しいでしょう。
ビジネスでも同じことだろうと思います。目的の共有がなされないと、幹部がやる気を持って実践することなど期待できません。始まりの時、あるいは状況が良い時こそ、目的の共有が成立します。事後に、劣勢に立ってからの目的共有は簡単にはいきません。
河野の言うとおり、「信頼関係及びコミュニケーション」が、目的の共有のためには必要不可欠です。一方的な指示出しではなく、信頼関係をいかに醸成するか、そのためのコミュニケーションをいかに効果的に行うか、これは組織の最重要問題になります。
