■マーケティングの巨人・レビット:『T.レビット マーケティング論』から
1 コトラーとレビット
マーケティングに関心のある人なら、レビットはご存知でしょう。しかし、一般にはあまり知られていません。ドラッカーならご存じでしょうし、コトラーも聞いたことがある人がいることでしょう。ではレビットは…となると、ほとんど反応がなくなります。
最近の若者だと、ドラッカーとそれ以外で線引きされますので、コトラーとレビットを並べても違和感を感じることはありません。『T.レビット マーケティング論』が出ています。600頁以上もある本ですが、専門家でないのなら、読了する必要はないでしょう。
「はじめに」に、[マーケティング界に大きな影響を与え、レビットの名を世の中に知らしめた]1960年「マーケティング近視眼」は、[「マーケティングの本質を述べた論文」として][いまだに多くのビジネスパーソンに読み継がれている]とあります。
2 販売とマーケティングの違い:「マーケティング近視眼」
「マーケティング近視眼」でレビットは、[販売は売り手のニーズに、マーケティングは買い手のニーズに重点が置かれ]、[企業が売ろうとするものが、売り手によって決まるのではなくて、買い手によって決まるという点]が重要であると指摘しました(p.19)。
[マーケティングを、製造の後に続く必要な努力]でなく、[本来あるべき姿はその逆]だと考える必要があります(p.21)。例えば[まず価格を低いところに決め、その価格で経営が成り立つよう、全員が最も効率よく働かざるをえないようにすること]です(p.22)。
組織の存続に必要なのは、適切な事業の定義であり、[産業活動とは、製品を生産するプロセスではなく、顧客を満足させるプロセス](p.31)であるといえます。つまり[顧客中心の企業]となるために必要な[課題に取り組まなければならない](p.34)のです。
3 まずは3つの章から:レビットの論文は必読
1963年の「アイデアマンの大罪」も、大切な論文です。[着想とイノベーションは同じではない]と記します(p.63)。実行力なくしてアイデアは具体化しません。[実現のあかつきに初めて価値が証明され]ます。ただのアイデアマンでは実現は不可能です。
ことに大組織では[専門チームを設けて、アイデアを受けつけ、検討し、実現へ向けて必要な後押しをすること]が求められます。[アイデアに基づいてより多くのイノベーションを生み出す仕組みが必要]であり、[仕組みに大きな価値がある]のです(p.79)。
[創造力豊かな人材はイノベーションや成長の原動力とは限らない](p.78)と見出しにあります。勘違いしやすいところです。以上の「マーケティング近視眼」「アイデアマンの大罪」に加えて、2001年6月のインタビューが重要であり、これが総論になっています。
第1章、第3章、第18章で80頁足らずですから、これらを読んだ後、興味のある章を一つずつ読んでいけば、十分でしょう。知名度ならコトラーでしょうが、どちらを先に読んだらよいのかと言われたら、私ならレビットを選びます。必読と言いたくなる本です。
