■「自由のためのバランス・オブ・パワーを作り上げる」政策:東アジアの情勢

     

1 台湾と言わなくても”freedom”と言えばわかる

アメリカのトランプ大統領が、チャイナを訪問とのことです。新聞のWEB版にも記事が出ています。それで、何か変化があるのでしょうか。首脳がどんな発言したという話があっても、それがどんな影響を与えるのか、そちらが問題です。古い対談を思い出します。

『日本とアメリカ』は岡崎久彦と阿川尚之の2002年に対談した本です。ブッシュ大統領(子)が就任したのが2001年でした。対談で、ブッシュ大統領の就任演説が話題になります。大切なポイントは、「自由のためのバランス・オブ・パワーを作り上げる」でした。

「in favor of freedom」だから、「自由のためになるように」ということになります。ここで岡崎が指摘しているのは、[台湾と言わなくても”freedom”と言えばわかるでしょう]ということです(p.79)。この路線が、いまも続いていると考えられます。

     

2 国際問題を平和的にしか解決できない力の関係

岡崎は、キッシンジャーが書いていたものに言及して、[バランス・オブ・パワーとは何か、極めて明快です。物事を平和的にしか解決できない状況を作ること][国際問題を平和的にしか解決できない力の関係を作ること](p.77)であると言うのです。

▼今度のブッシュの就任演説のテキストには、はっきり「バランス・オブ・パワー」と書いてある。「バランス・オブ・パワー」という言葉がアメリカの政治家の言葉の中に出てきたのは、ウィルソン大統領から後、ないのではないかと思います。もう百年近くないですよ。 p.78

これが[今度のブッシュ政権によって、二十世紀の百年をかけて試行錯誤がなくなって]、バランス・オブ・パワーが確立したのだというのが岡崎の見立てでした。[誰も、そこまで深く読んではないでしょう]と言いながらのことです(p.80)。

     

3 集団的自衛権が認められた意義:岡崎久彦の分析

2002年当時、日本はまだ集団的自衛権を認めていませんでした。[極東の軍事バランスではゼロに計算されてる](p.76)状態です。しかし2014年7月の閣議決定と、2015年の安全保障関連法で、「存立危機事態」において集団的自衛権が認められることになりました。

[日本がゼロでないということになると、これは大変なことになる](p.76)のです。つまり、日本が[集団的自衛権を認めると、中国側は日本の戦力を全部合計して考えざるを得ない。それだけでもう、平和的解決しかないことになる](p.77)と岡崎は言います。

チャイナ政権が、高市首相の「存立危機事態」に関連した発言を撤回しろと騒いでいるのも、勝負がついてしまうからです。トランプ政権のアメリカは、台湾に向けての武器輸出を推進してきました。これは現在も続いています。大枠はすでに決まっているのです。

目の前の発言がどうであるか、それがどれほどの影響があるか、大枠を見ていれば、わかることでしょう。日米の連携があれば、「自由のためのバランス・オブ・パワー」が成立するということです。特別なことが起こらない限り、この路線が続くことになります。