■経営理論について:故きを温ねて新しきを知ることの重要性

1 あえて枯れた技術を選ぶ

ITの技術者の方々とお話していると、飛び抜けて優秀な人たちは、最先端に飛びつかないものだと改めて思います。魅力的なのでウォッチはしているのは当然ですが、最先端のものは、まだ検証が十分ではありませんから、必ずしも一番良いものとは言いかねます。

必要な要求が最先端のものでなくても十分充たせる場合、あえて最先端のものを選択せずに、逆に当り前の、いわゆる枯れた技術を使うという方針を立てるのです。そのほうが、安定しています。見通しが立ちますし、要求も満たせますから問題ありません。

技術の分野において、仕事のできる人たちならば、これが当たり前だというコンセンサスができているようです。じつのところ、こういうお話を聞くと、別の分野でもそうなっているのだと、実感することができます。マネジメントの世界でも、同じはずです。

     

2 シンプル理論の使い方が重要

新しい理論が提示され、魅力的に思えることは良くあります。あとで振り返ってみると、その後の流れを変えた画期的な理論もあるでしょう。しかし、たいていの場合、いつの時代でも、最先端の理論なしに着実に成功を続けている人たちがいるものです。

マネジメントの場合、技術のように、いずれ新しいものに切り替わるとばかりは言えません。安定したフレームや理論のほうが、たいていの場合、安定的に使えます。技術者が予測可能性や安定性を重視して、枯れた技術をあえて採用するのと同じ発想です。

理論やフレームの限界を知ったうえで、上手に使うということが大切になります。マネジメントの理論と言っても、複雑なものではありません。たいてい使える理論やフレームはシンプルです。使い方が重要で、同時に間違ったら、それに気がつきやすいものです。

    

3 「故きを温ねて」が大切

マネジメントは、経営をうまくやっていくのに必要なものではありますが、経営に特化したものではありません。別の分野でも使えるもののほうが、安定性があるとさえ言えます。あるいは組織だけが使うものではなくて、個人でも使えるものがほとんどでしょう。

マネジメントというのは基礎的な学問だということです。最先端よりも、故きを温ねて新しきを知るという思考が必要となります。予測可能性や安定性が重要であり、シンプルで長持ちするものが良い理論、良いフレームだということになるでしょう。

かえって古い学問で使われてきたもののほうが、新しい事例研究で見出される理論よりもしばしば実際的です。当然のことであって、べつに驚くことではありません。ベースには、他の領域でも使えるもの、自分でも実感できるという安定の理論が必要です。

枯れた技術ならぬ、枯れた理論を求めて、古くからある学問の基礎を勉強することは、最先端の経営の理論書を読むよりも、役に立つかもしれません。法律、哲学、医学など、魅力的な学問です。最近は一層、「故きを温ねて」が大切だと思うようになっています。