■ヒントを与える本:梅棹忠夫『知的生産の技術』
1 フィールドワークを基礎とする方法
かつてベストセラーになった梅棹忠夫の『知的生産の技術』は、まだ滅びていないようです。新本で購入できます。古くなった点は多々ありますが、考え方が参考になるということでしょう。ビジネスにおいて、ここでの基礎を展開していきたいと思っています。
この本のアプローチは、学問的なものというよりも、フィールドワーク型というべきものだと、『論文ゼミナール』で佐々木健一が指摘していました。佐々木のものは、『知的生産の技術』とは別の系統の本です。「はじめに」で以下のように記しています。
▼梅棹氏の専門である「社会人類学」は、社会科学の一分野に分類できるでしょうが、若い学問領域であることもあり、研究型よりもフィールドワークを基礎とする思索型の論考が、その知的生産のモデルとされています。 はじめにxii
2 佐々木健一による一筆書き
佐々木の本は[初学者の導き]を目指しており、『知的生産の技術』のアプローチでは、[初学者の研究論文は書けません]という考えのようです(はじめにxii)。[本書の原稿を書き上げ、数か月たってから、やはり気になって読んでみました](xi)とのこと。
読者が違います。梅棹の方法では、読書後に「カード」に記すのは、「わたしにとって<おもしろい>ことがらであり、著者の<だいじな>ところ」ではないのです。佐々木は、この梅棹の言葉を引いています。これでは初学者の研究論文には向いていません。
佐々木は、梅棹の方法を一筆書きしています。[このような「面白い論点」をばらばらにし、カードの利点を生かしてそれらをリシャッフルし、関連づけることによって、新しい思想を生み出すのが、氏の「知的生産」です](xii)。これがエッセンスと言えます。
3 ヒントを与える本
ビジネスの場合、発想が大切です。これで行けるかもしれないという思いつきがあったならば、スタートは切れます。ゴールは遠くても、途中で検証しながら進めていけますので、最初のアイデアが大切です。仮説を生み出すためのきっかけが重要になります。
梅棹の『知的生産の技術』は、こうしたアイデアを生み出すためのアプローチでした。現在では、一項目のみを一枚のカードに記入する方式は有効ではなくなっています。パソコンで打ち込んでおいて、それをプリントアウトしたノートのほうが便利です。
ノートを読んで、あれこれ思いついたならば、関連した事柄どうしが連携してくるかもしれません。その時、検索が便利です。これについて何か書いたなという記憶があるなら、あとは検索を何度かすれば、必要項目に到達できるようになっています。
『知的生産の技術』で面白いと思ったところを、自分で展開していけばよいのです。佐々木も、[自由な発想の「知的生産」を目指したい、という方には、梅棹本の一読を薦めます](xii)と記していました。梅棹の本自体が、ヒントを与える本になっています。
