■マーケティングとプラグマティズム

     

1 マネジメントと哲学の歴史

もう十年以上前から、あれこれの勉強会をやってきました。研究会での知り合いや、講義を聞いてくださった人達など、大先輩から若者まで、いろいろです。テーマもその時々で違いますから、異分野の方々から、さまざまなことを学びました。ありがたいことです。

マネジメントの勉強会にも参加していたことがありますが、だんだんそこから離れていくことになります。考え方が、どうも違うという感じが抜けませんでした。経営学にはしっくりした感じが持てなくて、マネジメントと別の学問ではないかという意識があります。

マネジメントというのは、いわゆる経営哲学が中心になるもののはずです。そう思っていましたが、どうやら世の中では、そうではない様子でした。マネジメントのベースには哲学の歴史、マニュアルのベースには法律的思考があるという気持ちがあったのです。

      

2 『マーケティングを知っていますか』での解説

鹿嶋春平太『マーケティングを知っていますか』で、プラグマティズムが取り上げられています。めずらしいことだと思いました。この本でも、[マーケティングの専門書]にプラグマティズムなどを[説明していた本は一つもありませんでした](p.86)とあります。

これはヘンなことです。ところがこの本では、マーケティングを[導入するときの日本は貧しかったからね](p.87)という日本の話になっていて、これもまたヘンでしょう。いまのアメリカのマーケティングの本を読んでも、プラグマティズムの話はありません。

マーケティングに限らず、マネジメントは、哲学のエッセンスを組み合わせて骨組みを作ってきたはずです。しかしマーケティングの本でもマネジメントの本でも、この種の話はまず出てきません。そのため、哲学との関連を勉強会で話すと、案外、驚かれました。

     

3 鹿嶋流プラグマティズムの解説

『マーケティングを知っていますか』では、プラグマティズムについての説明を、ウィリアム・ジェームズの『プラグマティズム』に基づいて行っています。たしかにジェームスがいなかったら、プラグマティズムは世界的な哲学にはならなかったでしょう。

鹿嶋は、ジェームズがモノには統一的な体系的な面と、多様な個別的な面があり、両者には優劣はないと考えたと説明しています。そうなると、それぞれに対応する普遍的で法則的な知識と、個別的で多様な知識にも優劣の差はないということになるはずです。

[その結果、簡単には体系的・法則的な知識にならないような現象分野に対しても、学問的に取り組むことが楽になった]と鹿嶋は語ります(pp..82-83)。[その結果、二〇世紀になると、アメリカ産の学問が生成することになった](p.83)と言うのです。

[商品の類型論や、流通機関の類型論、流通の機能論などが形成され]ていきます。鹿嶋は[アメリカの”Marketing”は、独特の認識哲学に根ざしたマーケティング”実践学”]だとします(p.86)。同じくプラグマティズムを扱っても、ポイントが違うので驚きました。