■問われるのは生成AIを活用するノウハウ:生成AIの技術進歩と利用状況の乖離

     

1 文章チェックと生成AI

文章チェック講座のテキストを提出しました。チェックを経て、印刷に回ったようです。今回も、事前アンケートをいただきながら、それに合わせてテキストを作りました。これはいつものことですから、特別変わったことはありません。しかし、アッと思いました。

事前アンケートで、生成AIについての言及がひとつもなかったのです。講座の案内にも、生成AIという言葉は出てきません。案内を作ったのは昨年でした。そのときは、まだ生成AIに言及するのは早かったので、載せてないのは当然ですが、今なら載せています。

生成AIの技術進歩が、この1年でいかに大きかったかを実感しました。昨年の段階で仕事に使えたのは、チャットボットくらいだったでしょう。導入して成功した会社もあります。しかし成功確率が高いわけではありませんし、思ったより導入が少ない状況でした。

     

2 生成AIを使う側の問題

ここ1年、生成AIの技術進歩は圧倒的でしたが、多くの会社で、それを仕事に取り入れるのに、思ったよりも苦労しています。個人での利用が中心で、仕事に組み込んだ使い方はまだできていません。あまりに変化が速すぎて、それに追いついていない状況でしょう。

しかし、進歩が速いだけでもなさそうです。認識のギャップがある気がします。ずいぶん前にIT技術の営業担当者から、チャットボットはお客さんに魅力的に響かないという話を聞きました。チャットボットは枯れた技術だというイメージがあるのだそうです。

システムなどで生成AI付きとうたった製品でないと、なかなか売れないのに、チャットボットの利用があまり進んでいません。使い方さえ工夫すれば、着実な成果を上げるはずの技術が利用されていないのは、使う側に原因があります。ノウハウがないのです。

     

3 問われる利用のノウハウ

チャットボットは、生成AIのなかでは、かなり洗練された技術になっています。したがって、使い方が成果に反映するものです。成功確率が高くないのは、技術的な問題ではありません。そこに読み込ませる文章資料のほうに問題があるということです。

この時必要なのは、文章で書いた資料のほうを改善していくということになります。これさえすれば、ある程度の試行錯誤はあっても、成功確率はそうとう高いはずです。こちらの面での努力が十分でなかったように思います。問題なのは文章作成能力です。

いまや生成AIは聞き取りなどでも威力を発揮しますので、資料作成にも使えます。一部の個人が積極的に使っていますが、まだ組織的な使い方で、お見事という状況にはなっていません。これは驚くべきことでしょう。技術がよくても、使いこなせていないのです。

現在も将来も、生成AIが人間を超えるといった、かつて一部の人が想定していたような発展は、おそらくないでしょう。使える水準にある生成AI技術を選択して、それを業務に取り組むための工夫が必要になります。今後、利用のノウハウが問われるということです。