■ジョブ型の人事制度の導入:目的は成功
1 ジョブ型はやめたという話
最近、あまり聞かれなくなったジョブ型の人事制度は、どうなっているのでしょうか。もはや当たり前になって、あれこれ言わなくなっただけならば、問題ないのです。聞かれなくなっただけで、実施されているのなら、特別何か言う必要はありません。
しかし、ジョブ型はやめた、あれは無理だという話があります。ジョブ型の人事を検討したが、ダメだったということでしょう。なぜダメなのかも、たいてい決まっています。ジョブを定義するのが無理だということです。いまや、熱が冷めたのかもしれません。
ジョブ型雇用の導入は、どんな目的だったのでしょうか。たいていの場合、グローバル化や、高い専門性の確保、公平な評価といった話がされてきました。ジョブの定義によって、これらの目的の達成に資すればよいのですが、そうならなかったということです。
2 根本的な見直しになるジョブ型雇用の導入
ジョブ型人事を導入して、成功した事例として挙げられている組織でも、実のところ成功していないという話も聞こえてきます。失敗したとは言いにくいため、ごく一部の成功した領域を示して、成功をほのめかしているだけといった話もありました。
もともとジョブ型人事は、欧米型の人事制度ですから、日本の組織での仕事の仕方とは相いれないところがあります。日本の職場に当てはめると、ある種の不自然な感じがあるのでしょう。しかし世界で戦うために、どうやら必要だと認識されてきたのでした。
しかしジョブ型の導入は、頭を切り替えないと、どうにもならない大変な問題です。ジョブ型の雇用は、流行といったものではなくて、根本的な見直しになります。ちょっとした改善を目的としていたのでは、費用対効果を考えると、割に合いません。
3 成功する人間のモデル化
ジョブ型の人事制度を導入するのは、成功するためです。成功は、ある時、ある場面で、ある人が中心になって達成します。どういう状況下で、どういう仕事をしたら、成功するかということを客観化しなくてはいけません。これが基本です。
多くの場合、皆で一生懸命力を合わせて…といった曖昧な評価になりがちですが、これではダメです。どんな条件のもとで、どんな仕事をしなくてはいけないのか、成功の条件を客観視することが前提になっています。だから、ジョブを定義する必要があるのです。
現在の状況判断があって、そこで必要な条件があります。これをなしうる人間は、どんな人間なのか、モデル化することが必要です。モデル化するときの方法は、これができる人ということになります。機能からの条件提示です。これができる人が必要となります。
ある状況下で成功しようとしたら、こういう人が必要だと示せないと、期待も評価もできません。「こういう人」とは、何について(=ジョブ)、何がどのくらいできる(=定義内容)かで示されます。どんな状況であるかによって、要求が変わるのは当然のことです。
