■クレバーな経営者:正垣泰彦『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』から
1 火事からの復活
例外的ではありますが、この人は生まれつきの経営者なのかなあという人に出会うことがあります。正垣泰彦『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』を読むと、このサイゼリヤ創業者も、その種の人なのだろうと思いました。
在学中にサイゼリヤを開業したのに、お客は来ない上、火事にまであってしまいますが、[母に、「あの場所(=火事に遭った店)はお前にとって最高の場所だから、もう一度、同じ場所で頑張りなさい」と言われ、同じ場所で店を再開]しています(p.4)。
今度は、[商品に値打ちがあれば、場所が悪くてもお客様は入る](p.4)と考え、価格を[最終的には7割引きにまで引き下げた]ところ、[ずらっとお客様が並んだ。客数が1日20人から一挙に600~800人まで増えた](p.5)のでした。すごい話です。
2 無駄を減らし「核商品」を作る
正垣は[売り上げが増えなくても、無駄をなくして、経費を削れば利益は増える](p.21)と考えます。[メニュー数を絞ることが一番無駄を減らせる。同時に、自分の店にしか出せないぞ、という強いメニューを作ることだ](p.22)。「核商品」が必要です。
さらに[使用食材の数を意識]しないといけません。[食材のロスが増えたり、作業効率が下がったりするのは](p.38)、[使用する食材の種類が増えたことによるケースが多い](p.39)ためです。これは飲食業に限らず、別の業種でも参考になる考えでしょう。
異常事態のときには、[日頃やっていることを①「やめられる」し、②「絞り込むことができる」]と考えています(p.94)。つまり[異常事態は新しい力やアイデアを生むきっかけになる]ということです(p.95)。実際、サイゼリヤは火事の後に、飛躍しています。
3 クレバーな経営者
正垣は、「おいしい」とは「売れている料理」だと定義しました。だから、[お客様に喜んでいただけたかを計るバロメーターを客数と捉えて、客数を増やすことを最優先で考え]るのです(p.116)。おいしければ売れる、売れればお客様が増えます。
[サイゼリヤの経営理念は「人のため・正しく・仲良く」というもの]です。人のためとは、お客様を増やすこと。[「正しく」とは、「正しく経営をしていこう」ということ](p.116)。[あらゆる作業を「標準化」し、それを改善し続けている](p.117)のです。
[無駄なことをやめれば、体は楽になり、効率よく働ける](p.128)でしょう。また「仲良く」するには、[自分は正しく評価されていると思う][公正で客観的な評価]が必要になります(p.117)。それには[「言葉」の定義の統一](p.150)と、数量化が必要です。
[人間は一度に、いくつもの目標を追えるほど器用ではないから][追う数値は1つに絞ること](p.151)。また失敗から[学んでこそ、成功に近づける](p.127)。失敗は[より良く変化するために起きる](p.177)からです。クレバーな経営者だと思います。
