■失敗をチャンスにした人達の話から:検証の前提を作ること
1 問題をチャンスにして成果をあげた人
目の前に起こった問題に対して、これはチャンスだと思うことは、簡単ではありません。実際に問題が起きていますから、対処する必要があります。同時に、その対処方法が適切なものならば、今後に生かせるようになるはずです。だからチャンスではあります。
しかし、実際に問題が生じたことを契機として、逆にチャンスにして成果をあげた人からお話を聞いてみると、それだけではないのです。数名だけのお話ですが、問題にへの対処と、その対処法から連想して、他分野の見直しにまで発展させたということでした。
畑村洋太郎が『失敗学のすすめ』を書いています。失敗を次から起こさないように、失敗しない仕組みを考えて記述しておこうという内容です。失敗事例を改善や改革につなげる発想を採っています。先の人達は、改善・改革をもっと拡大発展させていました。
2 ポジティブ・フィードバックが王道
新しいことを構築しようとするときには、失敗から学ぶよりも、成功から学ぶほうが成果が上がります。こちらが王道といってよいでしょう。いわゆるポジティブ・フィードバックのアプローチは、新しいものを見出すときに、成功の方法から連想していくものです。
成功事例から新たな仕組みを構築していくとき、多くの場合、それは最初から完璧にはなりません。まずは小さな改善から始めていきます。改善は標準的な方法の一部を改変することですから、小を積み上げていく発想ですから、成功確率の高いものです。
改善をする場合には、特別な失敗例がなくても、より良い方法があれば、そちらに変更してみることが必要です。その結果をみて、その方がよければ採用になります。失敗事例がある場合なら、対応は必須です。失敗をクリアできる仕組みを作る必要があります。
3 失敗の克服を成功とみなして展開する発想
成功した人たちが教えてくれた「失敗はチャンス」という発想は、ポジティブ・フィードバックを加味したものです。失敗したものをクリアしたら、そのクリアしたこと自体が成功だと言えます。それなら、その成功を展開していけるだろうという積極的な発想です。
たんに失敗をクリアするというネガティブ・フィードバックだけにとどまらず、失敗をクリアしたことを成功と定義づけて、ポジティブ・フィードバックを行います。失敗を克服した後ですから、それが勢いを持って、他分野まで影響が及ぶということでした。
私たちは本当のところ、成功の要因がこれだと断定することはできません。失敗の原因が明確になったと、断定しかねます。それでも、結果を見て検証して、ひとまず成功しているので、失敗を克服したと判定している場合が多いでしょう。それが実際的です。
検証による判定をするならば、検証の前提となる対象が必要となります。新しい仕組みとか、改善した仕組みとか、それらが作れれば、検証は可能でしょう。チャンスをものにした人達は叩き台をすぐに作る人達でした。検証の前提が作れる人だということです。