■聞き取り訓練の必要性:基礎トレーニング
1 講義をノートに記録すること
業務の聞き取りについて、これは簡単なことではないと前回書きました。どのくらい面倒なことなのか、感覚的にわからないという人がいるようです。もっと単純なことの聞き取りをしてみればわかります。業務の理解といったこと以前の問題だとわかるでしょう。
たとえば自分の知っていることについて、そのままノートになるように準備して、必要な事項をホワイトボードに書きながら説明したとしましょう。それを聞き取って、文書に記録して、こちらに送ってください…と言えば、各人の理解レベルがわかります。
記録を見れば、個人差の大きいのに驚くはずです。そのままノートになるように記録できる人がいる一方で、数行で終わっていて、何を聞いたのかと思う人もいます。学校の授業をきちんと聞いて、ノートをとってきた人は、これの何が難しいのかといった感じです。
2 前提を固めること
30分か40分の簡単な話の記録さえ出来なかったら、業務の聞き取りなど出来るわけありません。読み書きの基本、文書作成の基本というべき能力があるならば、適切になされた講義ならば、それにふさわしい程度の記録ができる…ということが前提です。
前提が不安定なら、その先に進めません。簡単な話ならさっさと記録できるように、訓練するしかないのです。20代前半までならば、ちょっと気をつけていれば、何とかなりますが、20代半ばを過ぎた人達は、自分は仕事ができているという言い訳をしがちです。
ここが別れ道になります。私は学校の勉強をまじめにしてきませんでした、もう一度練習します、今からでも間に合うでしょうかという人が、ごくわずかですがいます。間に合うのです。面倒なことですが、あるところから何となくできると感じるようになります。
3 訓練できることが若さのバロメーター
絵の教室に通っている人を見ていると、単純なデッサンをやりたくないという人がいます。ピアノを習うための音楽教室でも、バイエルが嫌だという人向けの講座があるようです。基礎は、繰り返しになりますし、バカバカしいと感じることがよくあります。
しかし基礎をやらないと、その先に行けません。絵の場合でも、デッサンをやらないで画家になった人もいますが、基本となるデッサンをやったほうが、たいてい上達が早くなります。デッサンができるかどうかが、若さのバロメーターといってよいでしょう。
聞き取りも、同じです。不得意な人でも、仕事を覚えて、ある程度、日々の業務をこなしていると、自分は仕事ができていると感じるようになります。馬鹿らしいくらい単純な作業なのに、うんざりするほどできないとき、今更やりたくないという人が多数でしょう。
しかし現実はどうでしょうか。システムを組むのに人数が必要なくなってきているのはご存知のはずです。企画を立てるのは少人数で構いません。業務の構築も少数でできます。これらは聞き取りの先の作業です。前提をクリアした人のみが、その先に行けます。